第一章
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竹の間から
この時源氏の君は寺参りに出てその帰り都から離れた別邸で特にこれといってすることがなくくつろいでいた、その中で周りにこんなことを話した。
「何もない日にくつろいでもです」
「興がない」
「そう思われるのですね」
「はい」
細面で流麗で優し気な顔で述べた。
「実に」
「では音楽を奏でられますか」
「楽器もありますし」
「そうですね」
源氏の君は自分に仕えている者達に応えた。
「それもいいですね」
「酒もありますし」
「そちらを楽しんでもいいですし」
「これといってすることがないなら」
「そういったものを楽しみましょう」
「はい。しかし書でもあれば」
源氏の君はこうも言った。
「それを読みです」
「時を過ごせましたね」
「そして紙があればですね」
「詠って書くことも出来ましたね」
「そうでした。ですがないものを言ってもせんなきこと」
それでというのだ。
「今はです」
「はい、音楽を奏でられますね」
「若しくは飲まれますね」
「そうされますね」
「今は昼です、酒は止めましょう」
笑ってこうも言った。
「それは夜です」
「わかりました、ではです」
「今は音楽ですね」
「そちらを楽しまれますね」
「そうしましょう、幸い庭には竹達もあります」
別邸の庭には花がある、だがそれ以上にだ。
竹が豊かにある、それで源氏の君は話したのだった。
「貴方達と竹達にです」
「音楽を聴かせてくれますか」
「そうしてくれますか」
「笛や琴の音を」
こう言ってだった。
源氏の君は琴に笛を楽しんでだった。
供の者達に聴かせかつ彼等にも奏でさせた、そうすると共に庭も見た。
夜にはそこに酒も加えた、供の者達と共に琴を弾き笛を吹いて舞も舞ってだった。
酒も飲んだ、そして舞を一通り舞ってだった。
ふとだ、庭を見て言った。
「これは何と」
「どうされますか」
「庭をご覧ですが」
「何かありましたか」
「ご覧なさい」
その庭を見ての言葉だった。
「今の庭を」
「はい、それでは」
「そうさせて頂きます」
「主様がそう言われるのなら」
供の者達はいつも穏やかで自分達に優しい声をかけ労わってくれもしてくれる源氏の君を心から慕っている、それでだった。
彼の言葉にはいつも従っているがこの時もそうであり。
庭を見た、すると。
「おお、何と」
「何と竹が奇麗なのか」
「見事な竹ですな」
「月の灯りに照らし出され」
「夜の闇の中に浮かんで」
彼等は庭に多くある竹を見て話した。
「濃紫の中に緑の竹が浮かび」
「後ろから穏やかに照らされ」
「この世のものとは思えませぬ」
「何と不思議な美なのか」
「竹もそう
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