葬儀
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アルベルト・フォン・デューラーとマリア・フォン・デューラーの死から五日後の12月29日、故人の葬儀がオーディン郊外の公用墓地の一角で営まれた。薄灰色の分厚いカーテンに覆われた空の下、小雨がぽつぽつと大地に降り注いでいた。
二人の墓はすぐ横に並べられた。墓は平凡な形で、ありきたりの配置ではあったが、それがどことなく、見る人に夫婦仲の良さを感じさせた。二人の葬儀に参列した者は数人。喪主は二人の息子、アルブレヒト・ヴェンツェル・フォン・デューラーが落ち度なく務めあげた。葬儀が終わると、雨も、地上の動きに合わせるかのように降り止んだ。
父、アルベルトの親類としてはベアトリクス、そしてミュッケンベルガーが。もう一方、母、マリアの親類としては一人の少年が参列していた。アルベルトの職場代表としては副人事局長ハウプト少将がやってきて弔辞を述べた。それが人事局としての配慮だったのだろう。
「喪主の御勤め、御苦労様」
両親の葬儀を終えてから、一人、二つの墓の前に無言で佇むアルブレヒトに、喪服を着た参列者の少年がアップル・サイダーの缶を渡した。どうやら、墓地の近くにある販売機で買ってきたばかりらしい。缶の表面には透明な鏡の粒が、強化性アルミニウムの容器の上に斑模様に張り付いていた。
「ああ、有難う、・・君は?」
アルブレヒトは一言礼を言ってから、手渡されたものが何かを確認し、送り主の名前を尋ねた。少年は水色の瞳と白く美しい髪を持つ美少年であった。黒い喪服の色と相まって、参列者の中では目立っていた。
「俺はアーダルベルト。アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト。歳は14だ」
「・・奇遇だな。俺も14だ。葬儀の時にも言ったが、俺はアルブレヒト、アルブレヒト・ヴェンツェル・フォン・デューラーだ。よろしく」
自分の隣にいる人物の名前を聞きながら、アルブレヒトは、母の言葉にあった親類というのが目の前の少年であることを確信した。その名前を脳内で反芻する内に、自らとの関係に絶句しそうになった。返す言葉の中に、それを出さないようにするのに必死だった。
アルブレヒトの母親であるマリア・フォン・デューラーは結婚する前は、ファーレンハイト家の長女という立場で、ファーレンハイトの母、エリザベート・フォン・ファーレンハイトとは姉妹関係にあった。つまり、ファーレンハイトとアルブレヒトは従兄弟という関係になるのだった。
「こちらこそ。それで、お前、これからどうするんだ。親族がいるとはいえ、親無しの身だろう」
ファーレンハイトが、アップル・サイダーの缶を開けながら言った。プルタブが開くと、短く高い音が、一瞬だけ、その空間に流れて消えた。
「一人、大柄な体格の男がいたのを覚えているだろう。俺の伯父上だ」
「ああ。あの人か。軍人だったな」
先ほどの葬式の光
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