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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第81話 準備はいいか
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がとうございます」と最敬礼で応えた。視線を再び前に戻すと、珍しくヤンが俺の方を真剣に見ているのが視野に入った。同様にシトレの顔もそれほど優れていないところ見ると、『言質を取られた』ことに気が付いたようだった。

 以降、部隊の航路などの方法論へと討議は移っていく中で、俺がホッと溜息をつくと、横に座るモンシャルマン参謀長が、小声で「よくやった」と囁いた。振り向けば後ろに座るモンティージャ中佐とカステル中佐も、声には出さないが、小さく頷いて賛同している。

 先のエル=ファシル再奪取時、奪取自体で失われた戦力よりも、アスターテ星域まで足を延ばしてから失われた戦力の方が多かった。爺様の臨機応変な実戦の機微を頼りにするのは結構だが、第四四高速機動集団はまたしても『助攻』の立場にある以上、それで割を喰われるのは勘弁して欲しい。

 それから会議は一時間もかからず終わり解散となった。三々五々、旧知の相手に挨拶しに行く参加者の中で、俺はそそくさと用を済ませるフリで会議室から出ていくと、廊下に頼りになりすぎる後輩が待ち構えていた。

「まるで悪徳弁護士か総会屋みたいなことやってくれますね」

 戦艦ヘクトルはアキレウス級大型戦艦であり、しかも艦隊旗艦設備を有しているから、第八艦隊の参謀の一人であるヤンにも個室が与えられている。(ちなみに戦艦エル=トレメンドは標準型戦艦なので、俺にはない。モンティージャ中佐と相部屋だ)少しばかり荷物が散乱している個室で、何故かピート香が僅かに漂う紅茶を片手に、俺はヤンから苦言を呈された。

「作戦目標を達しても増援が来ない、と考える理由が先輩にはあるんです?」
「カプチェランカで勝ち過ぎた場合にはあり得ると考えている。通常ならばこれだけの艦隊を動かした場合、次の制式艦隊による前線哨戒(パトロール)がダゴン星域に到達するのは六月過ぎ。数も一個艦隊だ。イゼルローンの敗戦もある。十分すぎる戦果を見てわざわざ予算を組んで繰り上げる必要もない、と国防委員会が勝手に考える可能性は高い」
「帝国軍の増援を気にされていたのは、我が軍の増援より前に帝国軍が遠征規模の戦力を送り込んでくると考えたから、ですか」
「そうだ」

 地上戦であれば戦果の拡大の為、すかさず第二列が前面に出てくる。しかし宇宙艦隊はその規模から動員にはいたく金がかかる。その上、複数の艦隊が通常とは異なる動きをすれば、外部に察知されやすくなる。第四四高速機動集団がわざわざエル=ファシルの帰還船団護衛任務を請け負ったのも、情報漏洩を防ぐためだ。

「相変わらず先輩の視点の付け方は軍人とは思えませんね」
「軍人は向いてないと、どこかの誰かがしょっちゅう吹聴しているようだからな。ところでお願いしていた件、できたか?」
「出来てますよ」
 ヤンは肩を竦めて本
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