第81話 準備はいいか
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。ボロディン少佐」
「空気を読んだから来たつもりですよ、ジャワフ少佐」
お互いに敬礼もせず含み笑いを浮かべてがっちりと握手すると、ジャワフ少佐は首を軽く動かして俺をディディエ中将の前に誘った。
「おう、ボロディン少佐か。なんだ。まだ中佐になってなかったのか」
陸戦将校の分厚い筋肉の砦の中で、真ん中に立っている中将が一番ゴツイというのも中々面白い光景だが、中将は答礼の後にジャワフ少佐の一.二五倍の握力で俺の手を握って言った。
「あの小娘は元気か? ちゃんと陸戦科を受験するよう言い含めておいたが、願書は出しただろうな?」
「その節は中将やジャワフ少佐には大変お世話になりまして……」
俺がブライトウェル嬢の体力増強を依頼したのは、例によってジャワフ少佐だったのだが、どうやらハイネセンに戻ってからも嬢の面倒を見てくれていたらしく、たまたま今回の作戦の指揮官になるということで同じくハイネセンに戻っていたディディエ中将と地上軍関連の企業が経営するジムで遭遇し、それはそれはご丁寧に嬢を指導したらしい。
その翌日にヒョコヒョコと歩きに不自由していたブライトウェル嬢に気が付いた俺が嬢を問い詰め、ジャワフ少佐に抗議し、相手がディディエ中将だと分かって、激怒した爺様が署名入りで抗議文を中将宛に送りつけたのだった。それに対する正式な返答はなかったが、代わりに第四四高速機動集団司令部に二〇種類の味のプロテインが二キロずつと、刃先をゴムにした新品のトレーニング用トマホークが一本送られてきたのだった。
「俺の小手に手が届いたあの小娘は宇宙軍には勿体ない。だいたい親のせいで冷や飯を喰らわせるような陰険な宇宙軍より、公明正大な実力主義のウチ(陸戦総監部)の方が居心地いいに決まってる」
「本人の希望を聞いてみないことには、なんとも申し上げようがありません」
「妹を獣に攫われた情けない兄のような顔をするな。それでも『英雄ボーデヴィヒ』か」
宇宙軍の幕僚達に聞こえるような声量で言うディディエ中将も相当人が悪いのだが、これも儀式の一つだと分かってくれているだけありがたい。俺が目配せで合図すると、中将はグッと顎を引いて目に殺気をみなぎらせる。そして今度は逆に俺がディディエ中将と副官を、爺様と第四四高速機動集団司令部のテリトリーに連れていく。
爺様とはエル=ファシルでのお互いの活躍を讃える、いかにも空々しい会話が繰り広げられるが、その会話の途中から腹黒い親父が乱入してくる。会話は中断され、大多数の宇宙軍と少数の地上軍の幕僚達の視線が、長身の宇宙軍中将と筋肉質の地上軍中将に集中する。
「ボロディン少佐を中佐に昇進させない『ケチ』な宇宙軍に協力するのは業腹だが、これも命令のうちだ。今回はよろしく頼む。シトレ中将」
「『ウチ』のドラ息子
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