第81話 準備はいいか
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てエル=ファシルへの帰還を希望する住民は二五五万七〇〇〇名。ハイネセンに避難した時は三〇〇万人を超えていたから、四五万人近くが帰還を諦めたということだ。そのうち半数以上が辺境星域に散らばったらしく、マーロヴィアには想定より一万人も多い四万人もの移住希望者がいて、植民当初以来の好景気に沸いているという。他にもカッシナ・マスジット・アクタイオンといった農業主体の星系や、カスティリオーネ・プルシャ=スークタといった鉱業星系にも多くの移住者があり、図らずも人口減少に喘いでいた辺境星域の再活性化が見込まれるとのことだった。
しかし逆に言えばエル=ファシルの産業分野から労働力が消えてしまったわけで、いわゆる『戦後復興景気』というあまり好ましくもない好景気も、最初から躓いてしまう格好になった。フォローとして最初に進発する巨大輸送艦には、戦闘工兵隊からの払い下げ重機や陸戦部隊が使用する簡易的な人造蛋白プラントや水耕プラントも積載しているが、どれだけ効果があるかはわからない。取りあえずは電気と水道という生活に直結する中核インフラが無事で本当に良かった。
軍事作戦の方もまた、悩みの種は多い。当然帝国軍もエル=ファシルが同盟に奪還され、イゼルローンで勝利をしたとはいえアスターテにかなりの間、同盟軍の駐留を許してしまった。軍としての面子にかけて防備を強化していると考えていいだろう。
だが幸いアスターテ星域には艦隊を長期駐留させられるだけの根拠地となる惑星が全くない。前回の戦いで配備されていたのが二五〇〇隻と考えると、やはり同数規模の敵は配備可能ということだろう。しかし今度は同行する独立部隊はない。故に獣道を切り開くような電撃的な場荒らし作戦という形になる。間違っても正面決戦などで時間を費やす必要はないが、エル=ファシル星域やドーリア星域へのちょっかい出しを牽制する程度には、帝国軍に被害を与える必要がある。
その為、モンシャルマン参謀長は極めて投機的な作戦を立案した。前回の戦いでモンティージャ中佐が送り出した『付け馬』部隊が偵察哨戒した、ヴァンフリート星域に近い星系を最大巡航速度で通過していくというもので、戦略目的であるエル=ファシル星域との接触域からの帝国軍の引き離しと、戦術目的であるエル・ファシル星域外縁部およびアスターテ星域における敵戦力の充足状況の確認を同時にこなしつつ、可能ならアスターテ星域とヴァンフリート星域の接続点にある帝国軍の施設を破壊するという野心満点な計画だ。
二月四日にエル=ファシル星系を出動し、エル=ポルベニル星系からアスターテ星域アスベルン星系へと突入。戦闘行動がないと仮定すれば、一二日間で四つの星系を踏破し、ダゴン星域トルネンブラ星系へと突き抜ける。カプチェランカで主力部隊と合流するのは最短で二月二二日。
こ
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