第2部
ランシール
二人の距離
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が、私を追いかけたせいで途中で話を切り上げたんだった。
「だから、お前には責任を取ってもらうぞ。今から俺に屋台を案内しろ」
「うん、もちろん!!」
私は快く返事をした。なにより、ユウリと屋台を回れることをずっと心待ちにしていたので、願ってもないことだったのだ。
「そういえば、あそこの屋台に美味しそうなソーセージが売ってたよ」
「さっき食べたばかりだろ」
「泣いたりしたらお腹空いちゃったよ。見るだけ見に行こうよ」
「……やれやれ」
仕方ない、と言わんばかりに私のあとについて行くユウリ。だけどこのときばかりは否定するわけでもなく、黙ってついてきてくれた。
それからお祭りの時間が終わるまで、ユウリは私の我が儘に付き合ってくれた。いろいろなお店を回り、ソーセージはもちろん、屋台で売ってるお菓子や飲み物も二人で買って食べたり飲んだりした。
相変わらず素っ気ない態度のユウリではあったが、一つ違ったのは、いつもより私を気に掛けてくれたことだった。そんないつもと違う彼の行動に、私は胸が温かくなるのを感じたのだった。
「もう出立されるのですか?」
神殿でもう一泊した私たちは、翌朝には荷物の支度を終わらせ、エドガンさんに最後の挨拶をしていた。
神殿での宿泊料として夕べのお祭りのお手伝いをしたわけなのだが、用事が済んだらさっさと去るユウリの信条(?)に則り、すぐに出発できるよう準備するようにしている。
「ああ。もう用は済んだからな」
「そうですか。もっとゆっくりしていって欲しいと言いたいところですが、ユウリさんたちには大事な使命がありますものね」
そう言うと、エドガンさんは何やら一抱えほどの荷物をユウリに手渡した。
「何だこれは?」
「私たちランシールの人々からのせめてものお礼です。大したものではありませんが、どうぞお受け取りください」
エドガンさんのご厚意に、私はすかさずお礼を言う。
「ありがとうございます、エドガンさん」
何が入っているんだろう? ランシールを出たら早速開けてみようかな。
すると、神殿の入口から、勢いよく扉が開かれる音が響いた。皆一斉に振り向くと、入ってきたのはさらさらの美しい金髪を揺らしながらこちらに向かってくる一人の男性だった。その容貌はまるで絵本に出てくる王子様のような見目麗しい姿をしており、この町で初めて見る顔だった。
「誰だあいつは?」
「さあ……。でもすっごく綺麗な人だね」
ユウリも見覚えがないらしい。けれどこんな時間にここに入って来たと言うことは、エドガンさんと知り合いのはずだ。
「すいません、エドガンさん!! 寝坊してしまいました!!」
「遅いぞワーグナー!! もうユウリさんたちは出発するそうだぞ!!」
ワーグナー……。何だか聞いたことのある名前のような
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