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とある3年4組の卑怯者
86 不幸
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 藤木は笹山が怒りと共に涙が滲んでいるのが見えた。
「そうやってはっきりと言わないから皆から卑怯って言われるのよ!!」
 笹山は藤木をビンタした。それも勢いよく。
「笹山さん・・・」
「藤木君なんてもう知らない!悪いけど私もリリィさんも藤木君の想いには応えられないわ!!」
 笹山はそう言って去った。
(笹山さんに嫌われた・・・)
 藤木は笹山からも嫌われた事が確定したと気付いた。「二兎を追う者は一兎をも得ず」という(ことわざ)がある。自分が好きなリリィと笹山、両方から嫌われた今の藤木に相応(ふさわ)しい表現だった。また、その上友人の永沢や山根にも絶交を言い渡され、藤木に同情してくれる者は皆無だった。自分を悪く言わない人ならわかってくれるかもしれないと思い、藤木は長山を見つけると助けを乞おうとした。
「長山君・・・」
「な、何だい、藤木君!?」
 長山は困惑した。
「長山君は僕の事をそんなに悪く見えるかい!?不幸の手紙が来てそのまま出してしまった僕が・・・」
「え、その・・・」
 長山は返答に困った。
「藤木っ!長山君に味方にしてもらおうなんて本当に卑怯ねっ!あんたが悪いんでしょっ!長山君が困ってるじゃないっ!!」
 城ヶ崎が現れた。
「長山君、もう藤木なんて無視していいわよっ!人として最低な事したんだからっ!!」
「う、うん・・・」
 城ヶ崎に言われて長山は藤木から離れた。
(そ、そんな・・・)
 もう誰も友達ではなかった。授業が終わり、藤木は前田から不幸の手紙の罰として掃除をさせられた。やっと解放されると、藤木は責められた悲しさでいっぱいだった。
(もういいや、スケートしに行くぞ・・・。俺の唯一の取り柄で今日の事なんて忘れてやる!!)
 藤木は走って下校した。家に帰るなりすぐにスケート用ウェアに着替えて自前のスケート靴を引っ張り出してスケート場へと駆けていった。途中で藤木は笹山とすれ違った。しかし、笹山は目を逸らした。藤木は少し走るペースが遅くなったが、挨拶もせず、向こうからされる事もなかった。藤木はこれからは笹山やリリィへの想いも忘れるよう努力しようとした。
(ふん、藤木君はほんとスケート以外何もできないんだから!)
 笹山は汚物を見てしまったような思いでピアノ教室へと向かった。

 みどりは家に帰ると、堀の家に向かった。堀は清水のスケート場の場所を知らないので自分で案内するためだった。
「お待たせ」
 堀が戸を開けた。下はスカートから長ズボンに履き替えていた。
「それじゃあ、行きましょうか」
 みどりはようやくスケート場に行ける事になってさらに気持ちが高まった。
(藤木さん、いるかしら・・・?)
 
 スケート場に到着した。走り続けた為、息が切れていた。藤木は少し息を整えようと出入り口
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