第一章
[2]次話
義実家の方が遥かに
森光莉は工場の管理職の林田涼平と結婚して彼の家に入った、夫婦でマンションで暮らす様になったが黒髪を真ん中で分け一八七の長身で面長できりっとした顔立ちの夫にだ。
笑顔でだ、よくこう言っていた。
「お義父さんもお義母さんも凄くいい人でよかったわ」
「そうだろ、うちは貧乏だけれどな」
夫は笑ってサラリーマンの父とスーパーのパートの母のことを話した。
「性格はな」
「いいのね」
「親父もお袋もな、優しくて面倒見がよくてな」
黒髪をショートにしていて丸顔で大きなはっきりとした目と微笑んでいる形の唇を持つ色白の妻に話した。背は一六五程でメリハリの利いたスタイルだ。
「ご近所からも親戚の間でもな」
「評判なのね」
「そうなんだよ、だから俺もだよ」
夫は妻にビールを飲みつつ話した。
「昔からいい親持ったってな」
「思ってるのね」
「そうだよ」
実際にというのだ。
「有り難いことだよ」
「そうよね、私の家はね」
妻はここで自分の実家の話をした。
「父親は酒乱でいつも暴力振るって」
「ギャンブルもしてだよな」
「ひがみ根性も強くてね」
「いい人じゃないよな」
「悪口ばかりでね、母親もそうで」
今度は母のことを話した。
「子供、私のことよりも自分が遊ぶことでパチンコばかりで」
「半分育児放棄してたんだよな」
「欲が深くてヒス持ちで執念深くてね」
「やっぱりいい人じゃなかったか」
「家じゃ夫婦喧嘩ばかりでね」
そんな両親でというのだ。
「だから高校卒業したらよ」
「家出たんだよな」
「それからもうね」
「実家に帰ってないんだよな」
「そうよ、大学にいる間もそうで」
「就職してな」
「こうして結婚してもよ」
尚今も働いている。
「そうしてもね」
「実家には帰らないか」
「それでお義父さんお義母さんとは同居することになったら」
「いいのか?」
「いいわ、あなたさえよかったらね」
夫に笑顔で話した。
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