第二章
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「短い方が確かに衛生的だしね」
「昔は洗うことも難しくて少なくてな」
「シャワーないしシャンプーとかもよ」
「ないから」
「だからよ」
「そういうことか、わかったよ」
「それならあんたもよ」
話が一段落して早速だった、麻里子は大樹にあらためて言ってきた。
「剃ったら?せめて丸坊主にしなさい」
「せめてが丸坊主かよ」
「清潔よ、そうしなさい」
「するかよ、だから言ってるだろ」
「あんたにとってロン毛は命なのね」
「某東京卍観ろよ」
この漫画をというのだ。
「あのキャラな、一番隊の」
「死ぬ人ね、途中で」
「あの人のロン毛恰好いいだろ」
こう言うのだった。
「だから俺はな」
「ロン毛でいくのね」
「そうだよ、これからもな」
こう姉に言うのだった。
「誰にも邪魔させねえぞ」
「やれやれね、まあ将来どうなるか」
姉は今度は達観した様に言った。
「わからないけれどね」
「禿げねえからな、俺は」
「禿げなくてもよ、どうなるやら」
「俺は一生ロン毛だよ」
大樹は高校時代あくまでこう言っていた、だがふと興味を持って仏教それも禅宗の勉強をはじめてだった。
大学は禅宗の大学の宗教学部に入り。
僧侶の資格を得た、そしてある寺に婿養子に入り住職を継ぐことになったがこの宗派は僧侶は必ず剃髪をするので。
「剃ったわね、あんた」
「いや、高校時代の俺いや拙僧に言いたいよ」
嫁ぎ先に来た姉に僧衣を着てその頭で答えた。
「若い時の考えは一生になるかっていうとな」
「ならないわね」
「ああ、時としてな」
「そうもなるわね」
「もう髪の毛には未練はねえよ」
剃ったその頭で言う。
「拙僧はこれからもな」
「その頭で生きていくのね」
「御仏に仕えてな」
そうしてというのだ。
「生きていくよ」
「そうなのね」
「ああ、それで姉ちゃんこの前子供生まれたよな」
「男の子ね」
「その子も剃る様になるかもな」
「それはわからないわね」
麻里子は笑って答えた、そうしてだった。
笑って弟の頭を撫でた、剃り残しがあってざらざらとした感触だったので今度はくすりと笑った。触られる弟も何も言わなかった。
剃るのもよし 完
2022・9・22
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