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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第80話 怪物、登場
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為に戦地でも後方でも労を惜しまない君の、国家に対する献身には本当に頭が下がる思いだ。ありがとう」

 全方位の視線を受けたトリューニヒトはスッと席を立つと、小さく額にかかる髪を払うような手振りを見せながら、俺にむかって頭を下げる。俺の目から見て度が過ぎる仕草だが、直接的ではないにしても上役であることに違いはないので、こちらも視線を逸らすことなく小さく頭を下げて応える。それをまさに人好きする笑顔で受けると、今度は周囲に視線を送る。魅了の魔術でも含まれているのか、それだけで参加者の何人かの意気が上がったような感じだ。

「軍部としてはこれまでエル=ファシル奪回作戦やイゼルローンの後始末があった為、積極的に事業団に協力できなかったこと、国防委員として皆さんに深く謝罪したい。だが少佐がここまで述べた通り、国防委員会はその総力を挙げて皆さんのこれまでの労苦に報いるつもりです。どうかご安心頂きたい」

 お前がこれまでエル=ファシルの為に何をやったよ。『泥棒の舌』と評したのはモンシャルマン参謀長だったか。猛烈に業腹だが、ここで怒りを表しても何の意味もない。俺は表情を消し、顔を動かすことなく視線だけ動かしてモンテイユ氏を見ると、『聞いてねぇぞ、てめぇ』と言わんばかりに、眉間に皺を寄せている。この場ではもう誤解を解くことは出来ないので、小さく首を振るだけにとどめた。

「シェストフ副首相閣下。中央政府の一員として、閣下のご心配する事項については万全を期すよう手配いたします。必ずや住民の皆さんのご迷惑にならないよう軍部も行政も取り計らうつもりです。決して悪いようには致しません」

 手配するだけであって、実際にやるのはモンテイユ氏や俺だ。トリューニヒトとしては実務者側が動きやすいようシェストフ氏を牽制したつもりだろうが、取り計らう『つもり』であるので、責任を負うつもりがないのは明らかだ。だが聞いている副首相としては、トリューニヒトが『悪いようにはしない』と保証してくれたようなもの。なにについての保証かまでは、考えるまでもないことだろう。案の定、大きく溜息をつき安堵した表情を浮かべてシェストフ氏は腰を下ろした。

「どうでしょう。サンフォード副委員長。ボロディン少佐の計画を土台にしつつ、事業団実務者側の方で計画を進捗させてみては?」

 流石にトリューニヒトの存在を無視することは出来ないのか、眠そうな眼を開いて奴を見ると、う〜んと首を捻って数秒。逆の方向に首を捻ってまた数秒。良いでしょうと、口を開いたのは三〇秒以上たってからだった。

「では……え〜本日の議題である、エル=ファシル星系への住民の帰還運航および船団護衛計画についての可否についてですが、一応これを承認するということで、よろしいですかな」

 異議なし、という消極的な成分の多い声で
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