第2部
ランシール
お祭りの夜の胸騒ぎ
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広場を目指して走り続けるも、初めて通るこの路地裏からはなかなか抜け出すことが出来ないでいた。
同じところを何度も行ったり来たりしている気がする。男性が追いかけてくるという恐怖に駆られ、今どこを走っているのかもわからなかった。
誰でもいいから早く知っている人に会いたい。ユウリ、エドガンさん、へそにゃん!! お願い、誰か助けて!!
「見つけたぞ!!」
??!!
その声に、戦慄が走る。さっきの男性の声だ。
私は脇目も振らず一目散に走った。
けれど、どんどん足音が近づいてくる。
怖い!! 早く逃げなきゃ!!
「!!」
そのときだった。突然背後から思いきり腕を掴まれた。
「きゃああああっっ!!」
悲鳴を上げパニックになった私は、そのまま背後にいる人物に向かって思いきり腕を振り回した。
ドカッ!!
「ぐあっ!!」
私の腕振り回し攻撃は、見事にクリーンヒットした。そしてそのまま振り返らずに逃げ去ろうとしたのだが。
「ミオ!!」
私を呼び止めるその声に、足をぴたりと止める。
呻き声を発したその人は、振り返った私を見てこう言った。
「……助けに来たのに、随分な仕打ちだな」
腕が当たったと思われる下腹部を押さえながら、私の腕をつかんだ張本人であるユウリは、恨みがましい目で私を睨んでいる。
「……ユウリ!」
その瞬間、今一番会いたかった人物の顔が目の前に現れた嬉しさで、つい反射的に涙をボロボロと溢していた。
いきなり目の前で泣かれたユウリはぎょっとした。恐らく私に文句の一つでも言おうとしたのだろうが、どう対応していいかわからないのか、困惑している。
「だ、大丈夫か?」
「……ごめん、ユウリの顔見たら安心して……」
ユウリをこれ以上困らせるわけには行かないと、私は必死で涙を拭いた。深呼吸を数回行い、自分を落ち着かせる。
「俺が広場で話してるとき、お前が走っている姿を見かけたんだ。財布かどうとか言ってたが、まさか盗まれたのか?」
「あっ……!」
そうだ。あのときは無我夢中で逃げ出してしまったが、財布はあの人に奪われたままだ。
「近くで男が何かを探しているようにこの辺りをうろうろしていたが、そいつに盗られたのか?」
ユウリの言葉に、私はこくこくと頷く。
「ここで待ってろ。今からそいつを捕まえる」
そう言ってユウリは、男性を見かけたと思われる場所に向かおうとした。
「っ!! 待って!!」
彼のマントが翻った瞬間、私は思わずそれを掴んで引き留めた。
「ひ……一人にしないで」
今は財布のことより、一人でいる方が怖い。もしユウリのいないときに
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