第2部
ランシール
お祭りの夜の胸騒ぎ
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でもわかる。けれど、その仕草が私の神経を逆撫でしていることに、彼は気づいていない。
「君が追いかけてきたから、一気に興味が湧いたよ。オレは君みたいに好奇心旺盛な子が好きなんだ」
そう言うと男性は、片手で私の両手を拘束しながら、もう片方の手で私の頬を撫でた。
その瞬間、総毛立つほどのおぞましい感覚が全身を伝う。魔物と対峙した時とは全く違う種類の恐怖が襲いかかると同時に、戦闘の経験もなさそうなこの男性の手を振り払えないほど私の身体は硬直していた。
「こんな人気のない場所で知らない男にホイホイついてくるなんて、今時珍しいよ。もしかしてとんでもない田舎から来たのかな?」
その言葉に、反論できなかった。あながち間違ってないから余計に腹が立つ。
すると男性は、私が抵抗できないのをいいことに、服のポケットを弄ると、再び私の財布を抜き取ったではないか。
「やめて!! 返して!!」
「返して欲しかったら、オレの言うことを聞いてもらおうか」
ねちりと怖気の走る笑みを浮かべた男性は、私の顎を引き寄せると、自分の口元近くまで引き寄せた。さっきまで肩に触れられても何も感じなかったのに、今はこの男性に対して嫌悪感しか抱かない。何か文句でも言おうとしたが、喉が張り付いて思うように声を出すことができなかった。
「そうだな。この際だから、一人前の女にしてやろうか?」
「!?」
意味はわからなかったが、その言葉に背筋が凍る恐怖を覚えた。以前シャンパーニの塔でカンダタと対峙したあのときと同じ、言い様のない不快感。カンダタより遥かに力は及ばないが、不愉快さで言ったらこの人の方が段違いに酷い。
震える唇をかみしめながら意を決した私は、目の前の男性の股間に思い切り蹴りを入れた。
「あぐぅっ!!??」
男性はたまらず悶絶し、その場に崩れ落ちる。拘束が解かれた隙をつき、私は星降る腕輪の力を発揮して男性からするりと逃げた。
そのままここから脱出しようと扉の前に駆け寄り、ドアノブを回す。だが、鍵は男性が持っているようで、開けることが出来ない。
あぁもう、こうなったら仕方ない。幸い木製の扉で助かった。
「せいっ!!」
私は神経を集中させ、扉に向かって正拳突きを放った。エジンベアの大岩に比べたら大したことはない。一発で木製の扉が粉々になった。
「何ぃっ!?」
仰天した声を上げる男性。世間知らずな女は非力だと思い込んでいるのだろうか?
私は急いで店を出て、路地裏を走った。けれど土地勘がないので、どこを走っているのかまるでわからない。とにかくあの人から逃げなければ!!
ユウリ! 早くユウリに会いたい!!
私は広場の方を目指して走り続けた。
だが、
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