第10章 アルバレス帝国編
第51話 白魔導士
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る。3人はその回復薬を見つめ後、アレンへと視線を移す。そして、目を見開く。アレンは、アイリーンやエルザ達から遠ざかるようにして歩みを進めていた。
「ア…アレン…」
「一体どこへ…」
エルザとウェンディがそんなアレンを引き留めるようにして言葉を発した。
「ヒスイ王女のところへ行ってくる…」
アレンのその言葉に、最初に反応を見せたのはアイリーンであった。
「な、なら…話しておかねばならんことがある…」
アイリーンの言葉に、アレンは一瞬怪訝な表情を見せたが、その後にアイリーンが発した言葉により、それは驚きに変わることとなる。
アイリーンの魔法によって、ネズミの姿に帰られてしまったヒスイは、父であるトーマの手のひらで小さく涙を浮かべながら絶望していた。
アイリーンの話では、自身の姿を元に戻すには、アイリーンを殺すか、相思相愛の異性との接吻しかないとのことであった。ヒスイからしてみれば、そのどちらも難しい内容であった。前者は実力不足によって、後者は相手の男の気持ちによって決まる…。トーマやアルカディオス、ダートンも同じ考えであるのか、この上ない絶望の表情が見て取れた。
そんな雰囲気を漂わせていた玉座の間であったが、ある男の登場によってそれは一瞬で変わることになる。
「まさか…本当にヒスイ王女なのですか?」
ヒスイは、その声を聴き、ネズミとなった小さき身体と目でその方向へと意識を向ける。
「ア…アレン殿…」
「無事であったか…」
「…なぜ、ヒスイがネズミに変えられたことを…」
アルカディオス、ダートン、トーマがアレンの姿を捉えたことで、驚きと歓喜を滲ませるような言葉を発した。ヒスイもアレンの登場に声を漏らしたが、その声は『チュウ…』というネズミの鳴き声のようなものであり、人間の言葉を発するには至らなかった。
「アイリーンから聞きました…ヒスイ王女をネズミの姿に変えたと…」
アレンの言葉を聞き、ヒスイ達は驚きの表情を浮かべる。そんななかでも、ヒスイは今の自分の姿を見られたくないと、トーマの後ろへと隠れるように移動した。
「…姫様…」
アルカディオスは、そんなヒスイの思いを知ってか、苦悶の表情を浮かべる。無理もない…。あれだけ、慕い、好いていた男に卑しきネズミの姿を見られたくないというのは、男であるアルカディオスをもってしても痛いほどにその気持ちが分かったからだ。
だが、そんな思いを知らぬがごとく、アレンはヒスイの元へと歩みを進める。
そして、トーマの後ろに控えるネズミとなったヒスイを拾い上げると、自身の手のひらに乗せる。
アレンに拾い上げられたヒスイは、小さく赤面して見せるが、すぐに自身の姿を思いだし、逃げるようにしてそこから去ろうとする。だが、それをアレンの手によって制止されしまう。全身を、ネズミの姿とは言え全身をアレン
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