第2部
ランシール
巷ではこれをデートと呼ぶ
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好き嫌いとかないし、何を出されても食べられるから大丈夫だろう。
「……お前、俺の話、聞いてなかっただろ」
「うっ!?」
まずい。見透かされている。誤魔化そうとも思ったが、さらに墓穴を掘りそうなので控えめに頷く。
「まあいい。お前が好きそうなものを注文したつもりだから安心しろ」
「本当? 楽しみだなあ」
ユウリの計らいに、図らずも顔がにんまりしてしまう私。その様子を、ユウリは呆れながら眺めていた。
食事を待っている間、私はユウリと他愛のない話で盛り上がっていた。いや、訂正すると、盛り上がっていたのは私だけだった。
「そう言えばユウリ、お祭りで話すコメントは考えたの?」
「お前らが宣伝している間、ちゃんと考えておいた」
「流石だね。何て言うの?」
「なんで今お前に話さなきゃならないんだ」
「えぇ、別にいいじゃん。減るもんじゃないし」
などと、こちらから話しかけても相変わらずそっけない態度ではあったが、こういった場での彼との時間は、とても居心地よく感じられた。
いつしか話題も尽き、お互い無言でいる時間が増えた。すると、まるで店員さんがタイミングを見計らったかのように料理を持ってきた。
「お待たせしました。本日のおすすめコースです」
目の前に置かれた料理の数々に、私はすぐに目を輝かせる。
メインである大きなお皿には、こんがり焼いた分厚いベーコンと焼きたてのパンが乗っている。付け合わせのソテーや野菜スープもおいしそうだ。さらにデザートにはふんわり焼いたパンケーキ、その上にはたっぷりの蜂蜜とフルーツがかけられている。
「うわあ、おいしそう!!」
私はその豪華な食事を目の前にして、思わず歓喜の声を上げた。
「さすがに黒胡椒入りのメニューはなかったからな、これで我慢しろ」
我慢なんてとんでもない。私の好きなものばかりではないか。なんでユウリは私の食べたいものがわかったのだろう?
「良かったですね、彼女さん嬉しそうで」
料理を出し終えた店員さんは、ユウリに向かってそう笑いながら話しかけてきた。するとユウリは急に顔を真っ赤にして、
「違う!! 俺はただ、こいつが食べられそうなものをあんたに聞いただけだ!!」
そう大声で捲し立てた。言われて注文していたときのユウリたちのやり取りを思い出す。どうやらあのときに、店員さんに私が食べられそうなものを聞いていたようだ。
すると人の好い店員さんは、ユウリの怒声を浴びたにも関わらず笑顔を浮かべると、そのまま去っていった。
なるべくこれ以上怒らせないように思いつつも、目の前に出された料理に視線を移すと自然に顔が綻んでしまう。そして思っていることを素直に口にした。
「ありがとう、ユウリ。このお皿にあるもの、私全部好きだよ」
「……ふん。なら良かった」
少し照れ
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