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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第79話 第四一回帰還事業団統括会議
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えるつもりは毛頭ない。一応は国防委員会まで作戦は打診されているはずだが、対外的な発表はずっと後になるだろう。まともに応対しない俺に少し感情的になったのか、モンテイユ氏は立ち上がってカモメ眉を吊り上げ俺をギロリと睨みつける。

「あまりにも遅すぎるとは考えないのか?」
「いいえ。まったく」
「もしそうであれば貴官の正気を疑わざるを得ない。軍部はエル=ファシルで民間人を見捨てて逃亡した。そこにおられるヤン少佐のおかげで住民はかろうじて脱出できたが、ハイネセンに避難施設を作って以降、施設運用一つとっても非協力的な態度は看過しえない」
「そうですね」
「そうですね……それだけかね?」
「ええ」
「では貴官は一体、何のために会議に参加しているのか?」
「冒頭で議長が仰られた通りです。住民のエル=ファシルへの帰還についての運航およびそれに伴う護衛の件で、ご説明に上がった次第ですが?」

 まぁモンテイユ氏から見れば、避難日数が一日伸びるごとに、とんでもない額の費用が基金から抜けていくのだから、財務官僚として神経質になるのも無理はない。それまでの軍部の行動に問題がないわけでもないから彼を責めようとは思わないが、言わなければならないことはある。なに言ってんだコイツはという視線が、俺に向けて集中するのを確認してから、改めて俺が手を上げる。サンフォード氏は空気に飲まれているのかぼんやりしているが、俺が二度ばかり手を振ると、寝起きのように体を震わして、俺を指名した。

「小官の所属する第四四高速機動集団は、三月一〇日より七月三〇日まで、エル=ファシル星域を中心に帝国軍と戦闘を繰り返しておりました。モンテイユ氏もおそらく映像を見てご存知かと思われますが、地上でも激戦が繰り広げられておりました」
 宇宙艦隊だけでも七万人以上の被害を出した戦いだ。地上戦の優しい?はともかく、少なくともリンチがしでかした『失陥』についての軍の責任は果たしたと言っていい。
「エル=ファシル星域における帝国軍の存在をほぼ掃滅することは出来ましたが、戦場整理に手間取ったのは事実です。それだけの『激戦』であったのです。まず、それを皆様にはご認識ただきたい」

 俺はつい最近までその戦場で戦ってきたんだぞアピールは、俺が一番嫌う遣り口だがまず聞く耳を持たせるためには仕方がない。

「地上軍の多大なる協力によって、既に重要インフラの補修・整備も進んでおります。民間宇宙港も衛星軌道管制センターも発電所や水道施設に至るまで、『軍』が、準備を整えつつあります」
「そ、それは……本当なのかね?」

 シェストフ氏の顔色が明らかに変わる。それはそうだろう。戦場整理とはいっても都市は破壊され、インフラの復旧などそんな短期で見込めるはずがないという前提で、重工・建機関連企業へ入札の口利
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