第二章
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「しかしです」
「それでもですか」
「家族は貴女に愛情があるからです」
「だから私にですか」
「世話をしているのです」
狐にこのことを話した。
「自分の母親、祖母を」
「そうなのですね」
「そのことまで考えていたでしょうか」
「いえ」
狐は上人に首を横に振って答えた。
「そうしたことは」
「考えなかったですね」
「ただ私は邪魔だと」
「それは違います、自分ではそう思っていてもです」
「家族は違うとですか」
「そうです、残された家族は老いた母親そして祖母を寒空の中に追い出してしまった」
その様にというのだ。
「思ってです」
「そうしてですか」
「悔いているのではないでしょうか」
「そこまでは」
「ここは大和に戻るべきです」
狐に優しい笑顔で告げた。
「そして家族のところに戻るのです」
「そうすべきですか」
「元気になり。幸いにです」
上歩とは優しい笑顔のままさらに話した。
「この堂の外に柿の木があります」
「そうだったのですか」
「そこに四つの柿がありますので」
「柿の実ですか」
「それを持って来ます」
こう言って実際にだった。
上人は一旦外に出て四個の柿の実を持って帰ってきた、まずは狐にそのうちの一個を差し出して告げた。
「この一個は貴女にです」
「私にですか」
「貴女は私に食べものをお願いしてきたので」
だからだというのだ。
「これをです」
「まずはですか」
「貴女が召し上がって下さい、そしてです」
上人は言葉を続けた。
「残り三つはです」
「家族にですね」
「三匹の息子さんと」
そしてというのだ。
「お嫁さん達とお孫さん達にです」
「あげればいいですね」
「お土産に。どうでしょうか」
「はい、それではすぐにです」
狐は上人の話を聞いて応えた。
「柿を食べてです」
「そうしてですね」
「残りの柿を持って」
そうしてというのだ。
「大和に戻るべきです」
「はい」
狐は上人の言葉に即座に頷いて応えた。
「それではです」
「そうされますね」
「そしてです」
「家族と共にですね」
「また暮らします」
「そうすべきです、年老いると長生きしている間に知識と知恵を授かっています」
その二つをというのだ。
「家族は貴女のその二つを頼りにしていますよ」
「そうなのですか」
「はい、愛情とです」
それを持っていてというのだ。
「そうしてです」
「私の知識と知恵をですか」
「頼りにしていますので」
このこともあってというのだ。
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