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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第78話 作戦と事業
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痛いところを突かれて話を誤魔化そうとする時、左の唇が少しだけ動く。らしいわ『シスコンで口から先に生まれた男』は」
「ほう」
「『五五フェザーンマルクの腕時計はまだちゃんと動いている』って実際に填めてる腕時計を見せてくれて……私、新婚のはずなのに」
 勘弁してほしいわ、と言わんばかりにミリアムは右手を自分の額に当てる。
「公開はしていないけど、うちの会社、彼女から直接投資を受けているの。そういう意味では彼女はオーナーになるのかしら。当然出資者に対しては収支報告をしなくてはいけない。特に忙しい大口の出資者には、自宅でも楽屋でも自走車の中でも……歳が近いから私が選ばれただけど、あながち損ではなかったわ」

 そしてミリアム以外の中小零細、特に小口特殊運輸・情報通信・惑星開発技術・農産共同体といった分野に、ドミニクは歌手や女優として稼いだギャラを悉くつぎ込んでいる。同盟側だけでなく帝国側で商売する企業にも満遍なく。そして本当に小さい、フェザーンの大企業に比べればささやかな『企業懇親連合』の取りまとめ役のようなことをしている、らしい。

「いつの間にかいろいろなことを彼女の前で話すようになって、私が結婚するという時に、手紙を頼まれたの。怖かったら焼き捨ててもいいと言ってね。だからこの手紙がただのラブレターではないことは、私も承知しているわ」
「……」
「もっともあなたを見ていると、どうかと思わないでもないけれど」
「そうだな」

 フェザーン当局すら敵に回し、人知れず辺境で船ごと沈められる可能性すらあるのだが、それは手紙の内容をある程度絞ることで対処するしかないだろう。ドミニクの意図とは外れるかもしれないし、それでもう手紙が届かなくなることもあるだろうが、それはそれで仕方ない。

「ミセス・ラヴィッシュ」
「ミリアムでいいわ、なに?」
「同盟軍人が親族ということは、軍事公報の取り扱いは知っている、ということでいいか?」
「えぇ……わかったわ」
 声色が変わったということは理解したということだろう。
「手続きはあなたの方でしてくれないと困るのだけど。私はすでにフェザーン人だし、あなたの親族でも婚約者でもないのだから」
「わかった。済ませておく。それと」
「まだ、なにか?」
 不快とも面倒とも言えない、ただ言葉の端に徒労を感じさせる彼女の声に、俺は真正面から彼女を見据えて応えた。
「ドミニクを頼む。頼めた義理ではないが、これからも見捨てずに優しく付き合ってほしい」
 俺の答えに、ミリアムは鼻で笑うと小さく頬を緩めて言った。

「同じ言葉を五〇〇〇光年も跨いで聞かされる身にもなって欲しいわね」





 想定外の事態があったものの結局残りの三日間を、ウィッティや他の時間がとれた同期生達と夜な夜な飲み歩き、
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