六十三 開眼
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あの時、アイツらと同じようにあの手を掴んでいたら…何か変われたのだろうか。
俺の運命の行きつく先は違っていただろうか。
「俺と共に来るか、大蛇丸の許に戻るか―――ああ、逃げるというのも一つの手だな」
中忍試験予選試合、キン・ツチ、ドス・キヌタ、ザク・アブミに提案してきた存在の発言。
彼ら三人の命運を握った交渉。
当時、大蛇丸の命令で、うちはサスケを襲ったものの、逆に腕を折られかけ、予選試合の対戦相手である油女シノが原因で右腕を失うという二度の失態を犯したザクの前に差し出された選択肢。
失敗続きで後がない音忍三人衆にとって、彼の交渉はまさしく地獄に垂らされた蜘蛛の糸だった。
サスケにしろ中忍試験にしろ、しくじった自分達に、当時、大蛇丸がどんな処罰を下すのかわからぬ状況下。
彼の───うずまきナルトの提案はあまりにも魅力的なものだった。
大蛇丸の許に戻れば厳しい処罰。ザク達は知らなかったが、その頃の大蛇丸は彼ら三人を禁術の生贄にしようと考えていた為、死は免れない。
逃げたとしても追っ手を差し向けられる。
『大蛇丸の許に戻る』を選べば禁術の生贄にされ、はたまた『逃げる』を選べば音忍の追手に追われる―――どちらに転んでも行き着く先は『死』だ。
つまり最初から選択肢はひとつしかあり得ない。
故にドスとキンは、選ばせる気のない唯一の選択肢を選んだ。
そしてザクは───。
あの時、ナルトと共に行くという選択を若干渋っていたドスとキンの背中を押したのは、ザク自身だった。
中忍予選試合にて三人ともが運ばれた医務室。
その壁に【斬空波】で穴を空け、外の向こうにいるナルトの許へ向かうよう、背中を押した。
いや、あえて突き放した。
ドス・キンと違い、幼少期に大蛇丸に拾われ、選ばれた事を生きる拠り所にしていたザクにとって、ナルトの交渉に対する答えはひとつしか持ち合わせていなかった。
例えその末路が、死だと理解していても。
躊躇いなく、ドスとキンを、ザクは送り出した。
医務室の内と外。
【斬空波】で穿った円形の穴が、彼ら三人の運命の分かれ道。
ドスとキン、ザクの双方の命運があの時大きく変わり、外へ向かう二人が光射す道を向かう一方、ひとり残されたザクは大蛇丸と寄り添う闇の道しか残されていなかった。
音忍三人衆――キン・ツチ、ドス・キヌタ、ザク・アブミ。
その名前はツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨という三つの骨から成り立つ耳小骨を思わせる。
鼓膜の振動を蝸牛の入り口に伝える役割を持つそれらは、切っても切れない相互関係にある。
可動連結している三つの骨だが、隣接しているツチ骨とキヌタ骨が靭帯で頭骨に固定されているのに対し、アブミ骨は
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