六十三 開眼
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光景が。目の前の現実が。
サスケは信じられなかった。
「…負け犬と言ったが前言撤回するぜ。見所のある最期だった」
ラップをやめ、いつになく真面目なキラービーの声が遠くに聞こえる。
耳鳴りがした。
空で弾けた血の雨を浴び、充満する血臭。
自分が負った深い傷も、今、この瞬間、サスケは忘れた。
蛸足が二本ほど、衝撃で吹っ飛ぶ。サスケの傍らで水飛沫が上がった。
すぐ傍に墜落した蛸足によって沸き上がった波が、真っ赤になったサスケからザクの血を洗い流してゆく。
目の前でザクが弾けた。死んだ。
───サスケを庇って。
「生きろ──うちはサスケ!!」
ザクの声が耳から離れない。
あの発言で自分は救われたのだ。
嫌われていると、憎まれていると思っていた相手によって、サスケは今、生かされている。
奇妙な心地だった。
共に大蛇丸に師事していたとは言え、同じ音隠れの忍びとして滞在していたとは言え、嫌われていると思っていた。
なんせ、かつて中忍試験でサクラを泣かせ、自分が腕を折りかけた相手である。
思うところは少なからずあったし、ザクもまた自分を恨んでいるのは重々理解していた。
更に、復讐相手も同じだった。ザクもまた、何故かナルトを憎んでいた。
だからどちらが先にナルトを殺すかと敵対した事もあった。
大蛇丸のお気に入りだと、調子に乗るな、と何度突っかかれたことか。
幾度も目の敵にされ、そのたびに適当にあしらってきた。
だから八尾狩りでザクが途中で抜けることも想定内だった。
アイツが自分に付き合う義理などない。
なのに、戻ってきた。
そうしてザクは、サスケの命を守る為に、その命を散らした。
その行動はサスケの想定外だった。
空を旋回する鴉。
イタチの忘れ形見であるソレは八尾の気を逸らしてくれているらしかった。
その鳥と眼が合う。
眼の奥が熱い。アツイ。あつい。
決して親しい者ではなかった。
仲間ではなかった。
友でもなかった。
それなのに。
何の、情も抱かない相手だ。
それなのに。
無駄死にさせてはいけない、と血が騒いでいる。
この死を無意味にしてはいけないと本能が叫んでいる。
親しい者の死というわけではないけれど、真っ赤な花火がサスケの眼に焼き付いて離れない。
瞳を閉ざす。瞼の裏に、一瞬、懐かしい顔が過ぎった。
波風ナル、春野サクラ、はたけカカシ…彼らがザクと同じさいごを迎えたら…と想像すると、更に眼の奥が熱く滾った。
衝撃を与えたザクの死を代償に、瞳の奥がまわる。
回る。
廻る。
左眼から血の涙が溢れた。
「───【
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