六十三 開眼
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
…──差し出された手を握り返していれば。
或いは、我愛羅から返り討ちにされた時に、自分を助けたナルトに「俺もドスとキンのように連れ出してくれ」と懇願していれば。
プライドを捨て、救いを求めていれば。
この結末を迎えずに済んだ、かもしれない。
(俺は…俺は、あのふたりとは別の道を…大蛇丸様の許に戻る選択を選んだんだ)
夢を見るな。脳裏に過ぎったドスとキン、あの二人と共にいる自分を夢想するな。
音忍三人衆として再び三人が集結する世界など、在りはしないのだから。
しかしながらそれでも、今猶、ザク・アブミの忠誠心は変わらない。
幼少期、何もできずにいた不甲斐ない自分を拾ってくれた大蛇丸に忠誠を誓った。
その信条は、大蛇丸がいなくなった今も変わらない。
心の支えとしてきたものは、音忍三人衆の命運を分けたあのナルトの言葉如きで揺るがない。
ザクの身の安全を保障する為、大蛇丸の毒牙にかからないように取り計らったナルトの意図。
そしてドスとキン、ふたりが自分を気にかけていた事実。
それを、ザクは最後の最期まで気づけなかった。
「此処で、てめぇを見殺しにしたら大蛇丸様に申し訳が立たねぇだろうが」
己の身体が膨張してゆくのがわかる。
死が、凶悪な鎌首をじわりともたげた。
「だからてめぇは大蛇丸様の期待に応える為にも──」
事実よりも信条のほうが、ずっと重みがあった。
真実、大蛇丸が自分を捨て駒にしようと考えていたとしても。
現実が大蛇丸を信じ続けた自分を裏切る真実だったとしても。
彼の、忠誠心は揺るがない。
ずっと、昔からザクは大蛇丸の忠実な部下だった。
(───だから俺は後悔なんてない)
あの時、ああしていたら。こうしていたら。
だなんて仮定の運命に縋り付いたりしない。
俺は俺の信条のままに、この決意に後悔はない。
大蛇丸様の為、サスケを生かすことに。
ああ、でも。
願わくば。
酷く惨めな人生に転機を、未来を、夢を一時でも与えてくれた──
「大蛇丸様に見届けてほしかったなァ…」
己のさいごを。
赤。
赤。
真っ赤な花火。
サスケは見た。
ザクの身体が一回り大きくなったかと思うと、真っ赤な球体と化したのをサスケは見た。
光が空中で湧き上がる。何百何千もの小さな粒子が青空に真っ赤な噴水を湧き上げる。
いや、それは肉片だった。ザクを構築していた身体そのものだった。
腕も顔も頭も足も、何もかもが細かい肉片となって飛び散った。
信じられなかった。
目の前の真実が。目の前の
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ