六十三 開眼
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だがザクは戻ってきた。
自分の信条を、忠誠を、貫き通す為に。
「負け犬が戻ってどうする♪負け犬は負け犬らしく尻尾巻いて逃げろYO、バカヤローコノヤロー♪」
「うるっせェよ、タコヤローがッ!!──おい、うちはサスケッ」
巨大な姿となった八尾に言い返すと、突如乱入した彼はサスケへ怒声を浴びせる。
「てめぇは大蛇丸様のお気に入りだろーが!こんなところでくたばってんじゃねぇ!!」
「カッコつけて颯爽登場♪だけどカッコ悪く即退場♪」
化け物の声がこだまする。
谷間に轟く下手なラップが耳障りで、逃げたくなった足の爪先を元来た道へ向けた。
震える足を叱咤する。
聳え立つ巨体の蛸を前に、矮小な人間が立ちはだかっても無意味なだけ。
巨大な力を前に無力なだけ。
その真実を理解していても、ザクは戻ってきた。
化け物の前に身を投げ出した。
「うちはサスケッ!てめぇは大蛇丸様の…三忍の弟子だろーが!蛸如きに殺されるようじゃ、大蛇丸様が泣くぜ…!あの方の期待を裏切るなよ!」
既に自分には逃げるすべもない。手段もない。
重傷を負ったサスケの代わりに、八尾化して化け物になったキラービーの尾に捕まった今、ザクに逃げ道はない。
失った右腕の代わりに得た義手。かつて大蛇丸が自分にくれた大事な腕も、今や八尾の尾の一本に絡まっている。
獲物である蛸足を決して逃がさぬように捉えたソレは、吸盤に引っかかって取り返せそうもない。
「もういい…!腕の一本や二本くれてやる!だが、その腕は特別だからな…代わりに、蛸足纏めて吹っ飛ばしてやらァ!!」
そういえば誰かが言っていた。
「着眼点は悪くない。でももっと君に合った装備の仕方があるはずだよ」
そう、誰かが助言していた。
予選試合が終わり、本試験前に闇討ちした我愛羅の術の餌食から自分を救い出した彼の…──ナルトの忠告をザクは無視した。まじまじと義手を見ていたナルトから、大蛇丸から頂いたその腕を取り返す。
ドスとキンを誑かし、唆し、自分と引き離した張本人。
ドスとキンの背中を押したのは自分と理解しても恨みを抱かずにはいられなかった存在。
うずまきナルトの顔が一瞬、ザクの頭に過ぎる。
あの夜に見上げた月より強烈な光芒を放って見える、黄金の髪。
そして今現在、八尾によって投げ出されている空の澄んだ蒼と同じ瞳。
ナルトへの返事が食い違った事で、ドス・ザク・キンの命運は大きく変わった。
後に果てしなく遠ざかってゆく三人の距離。
同じ任務を与えられた間柄でしかなかったと言え、一時的にも音忍三人衆としてチームを組んだ三人。
あの時、自分が頑なに選択を拒まなければ、ドスとキンに反発して交渉を一蹴しなければ。
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