六十三 開眼
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前庭窓または卵円窓という蝸牛の入り口に繋がっているのだ。
偶然とは言え、医務室の壁に穿たれた円形の穴はどことなく窓に似ている。
外と内を繋ぐそれを通って去って行くキンとドス。キン・ツチとドス・キヌタの背中を、ザク・アブミはただ見送った。
壁一枚。外界と内界を遮るそれは、【斬空波】で簡単に壊せる代物。
しかしながら、あの時のザクにとっては、まるで目前に聳え立つ山のように感じた。
大蛇丸について行けば、行きつく先が死だと理解していた。
けれど彼の気まぐれにより、ザクは今日、この日まで生き延びた。
禁術の生贄にもされなかった。
『木ノ葉崩し』で大蛇丸に【穢土転生】の生贄にされたのは、ザクと同じように中忍予選試合で敗退した、赤胴ヨロイと剣ミスミだった。
もっともザクは知らない。
自分がその際、禁術の生贄にされなかった理由が、少なからずナルトのおかげである事実を。
そもそも大蛇丸がザクに与えた義手は、禁術の生贄に使う前段階だったのだ。
人工物のそれは大蛇丸から直々に頂いた義手。
実際に用意したのはカブトだが、ザクは予選で右腕を失った自分を気遣ってくださったのだと、より一層大蛇丸に感謝の念を募らせた。その義手自体が自分の首を絞める武器そのものだとも知らずに。
敬愛する大蛇丸からわざわざ義手を貰って以来、益々大蛇丸に傾倒していたザクは知らない。
自分がその義手に埋め込まれていた麻酔針で禁術【穢土転生】の生贄にされる寸前だったという事実を。
予め埋められていたらしいその針の先端には、象をも痺れさす毒が塗られていたのである。
ナルトが別のモノとすり替えるまでは。
禁術【穢土転生】の生贄にする直前に、麻酔で身体の自由を奪うつもりだった大蛇丸はしかしながら、ナルトの行動の裏を読んでザクを捨て駒にするのを思いとどまった。
真夜中のお茶会と嘯いて、大蛇丸と会談したナルトはあの時、ザクを助けた理由を問うた大蛇丸に対し、沈黙を貫いた。
相手の言葉や反応を深読みする大蛇丸の性格を逆手に取って、敢えて黙する。
そうすれば少なくともザクをただの捨て駒にはしないだろうという思考故だったが、ナルトの目論み通り、大蛇丸は禁術の生贄にザクを使わなかった。
ザクはチラリ、と眼下を見る。
大嫌いなうちはサスケが満身創痍で、自分を呆然と見上げていた。
無理もない、と思う。
自分もどうしてこんなスカした奴に命を捧げてんだか。
自嘲する。
八尾狩り。
『暁』の一員として認められる為、サスケに課せられた任務。
ザクはそんなものに興味はなかった。そもそも大蛇丸がいない今、サスケに同行する義理もなかった。
だから意外と強い八尾の人柱力であるキラービーとの戦闘中に抜けたのだ。
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