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Fate/WizarDragonknight
触手の猛攻
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は、床に空いた大穴に消えていた。

「倒した……のか?」

 ビーストは、大穴を覗き込みながら呟いた。
 ウィザードも、彼に続く。

「そもそも、アイツは何だったんだ? この事件の犯人だってことには間違いないと思うけど」

 ウィザードは先ほどの犬のことを思い出した。
 あの触手が、犬を瞬時にミイラにした。体液を吸い上げる能力など、人間が食らえばと考えるだけでおぞましい。

「つうことは、どっちにしろ奴をしっかりとやっつけねえといけねえわけだ」
「……一度降りて、追いかけてみよう」
「そうだな。そうするしかねえよな」
『ファルコ ゴー ファ ファ ファ ファルコ』

 ビーストも頷いて、オレンジの魔法を発動した。
 オレンジの風が彼の方に、ハヤブサのオブジェを付ける。
 風を纏いながら、飛び上がった二人。
 だが。

「な、何だ!?」

 その異変がマンション全体に走る。
 揺れ。
 だが、それは地震のような自然現象ではない。
 どんどん震源が近づいてくるそれ。

「おいおいおい! これやべえんじゃねえのか!?」

 ビーストの言葉に、ウィザードも頷く。
 もう、マンションも持たない。グラグラという揺れと、部屋中に走る亀裂。
 そして。
 背後の室内の景色が、変わった。
 壁や床を突き抜けたのは、銀色の生物。

「なっ!?」
「コイツが、触手の本体かっ!? こんなデカブツが、マンションに物理的に潜んでいたってのか!?」

 生物___その巨体から、もう怪物と呼称するのが相応しい___が、胎動を始める。
 頭部らしきところに、黄色の球体。そして、それを円錐のように、銀色の骨格が覆っている。

「___」

 その顔を見た時、一瞬。ほんの一瞬。
 見滝原南で遭遇した怪鳥と、その顔の形が似ていると、ウィザードは思ってしまった。
 怪物が、唸り声を上げながらその球体を光らせる。
 ウィザードとビーストが反応する間もなく、怪物が叫ぶ。
 超音波にも匹敵する音声に、三半規管が狂いだす。
 そして。
 怪物___ムーンキャンサー。
 その特徴である触手から、あらゆる角度へ超音波メスが放たれた。
 戦場である普通のマンションを、無数に貫く黄色い光線。そんな攻撃を受ければ、普通の建造物が絶えられるはずもない。
 コンクリートのマンションは、溶けるようにゆっくりと崩壊していった。
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