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焼肉の匂い
第二章

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「焼肉の匂いがね」
「そうですか」
「気を付けなさい、私も焼肉は好きだけれど」
 それでもというのだ。
「スーツから匂う位だとね」
「よくないですか」
「少なくともいい感じはしないわ」
「じゃあ匂い消します」
「オーデコロンでもかけるかね」
「時々クリーニングに出すことですね」
「そうしなさい」 
 佐上は黒柳に真面目な声で告げた。
 そして後日またいいことがあったのでだ。
 焼肉屋で食べたが店員に佐上に言われたことを話してからこう言った。
「確かにここにも結構来てるしな」
「それだとですね」
「スーツに焼肉の匂いが滲み込むのもな」
 このこともというのだ。
「当然だな」
「それで、ですね」
「ああ、今はスーツにだよ」
 今着ているそれにというのだ。
「オーデコロンかけてるよ」
「この場合はお洒落じゃなくて」
「エチケットでな」
 それでというのだ。
「やってるよ」
「匂い消しですね」
「ああ、焼き肉が好きでもな」
 黒柳はさらに言った。
「気をつけることはな」
「あるってことですね」
「そうだよな、しかしな」 
 それでもとだ、彼はこうも言った。
「俺はこれからもな」
「焼肉は召し上がられますね」
「生きがいだからな」
 こうまで言っていいものだからだというのだ。
「これからもな」
「そうされますね」
「ああ、そしてな」 
 言葉を続けた。
「今日も食うな」
「ではまずは何を持って来ましょうか」
「今日はサムギョプサルにするか」
「豚肉ですか」
「それ食おうか」
「はい、じゃあ持って来ますね」
「それで酒はな」
 次にこれの話をした。
「いつも通りな」
「ビールですね」
「大ジョッキでな」
 笑顔で言ってだった。
 黒柳はビールも楽しんだ、焼肉も食べてのそれは彼にとって何にも代え難いものであった。


焼肉の匂い   完


                 2022・8・21
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