出前
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見返すミイラ。服装や髪形から、中年女性のようだ。
そして。
「もしかして……出前を注文した日野原さんって、この人……?」
「ま、マジか……? おい、待てよ。お前が可奈美から出前受け取ったの、そんなに前じゃねえよな?」
「……一時間も経ってない」
「つうことは……」
コウスケが言いたいことは、ハルトにも分かっている。
その時、どこかで物音が聞こえた。破壊された家具が倒れたのか、壁が崩れたのか。
ハルトは、静かに彼女の腕に触れてみる。ミイラの水分が抜けきった体は。
「……まだ温かい」
「はあッ!?」
その事実に、コウスケも青ざめる。
さらに、物音は続く。
破壊された机から食器類が落ち、数少ない無事だった部類が割れる。そんな音が、立て続けに発生している。
「何か……嫌な予感がするんだが」
「奇遇だね。俺もだよ」
そう言いながら、ハルトは指輪をベルトに読み込ませる。
『コネクト プリーズ』
見慣れた魔法陣より、銀色の銃剣、ウィザーソードガンを引き出す。同時にコウスケもその腰に付くベルトに手を当て、その中より武器を召喚した。
ダイスサーベル。持ち手のすぐ上にサイコロが内蔵されており、彼の魔力を引き出す能力を持つ。
そして。
「何か、いる……!」
ハルトの視界、その端に何かが映った。
太く、長い柔軟な動きをする生物的な何か。
瓦礫と化した家具をすり潰しながら、それはピタッと動きを止めた。やがてハルトたちを見定めるかのごとく、うねり、その体を持ち上げた。
「なんだあれ……?」
筋肉繊維のようにも見えるそれ。紅色の筋の集合体が、じわじわと持ち上がっていく。
触手。
そうとしか言いようがない。細長く、鞭のようにしなるそれと、その先端には銀の部位が備わっていた。
「なあ、これ……」
「こんな異常事態にある、異常なもの……もう、間違えようがないでしょ」
そして、それ以上の言及は許されない。
先端を蛇の首のように持ち上げた触手は、そのままハルトとコウスケに襲い掛かって来たのだから。
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