出前
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果たして人が住む場所なのだろうか。
全ての家具が、原型さえもとどめないほどに破壊されている。もはや粉みじんとも形容できるそれ。
それは、内側から何かが膨張して押しつぶしたかのようだった。家具家電が内側の圧力で外側に潰れており、中には火花を散らしているものもある。
「おい、これどうなってんだ?」
「俺だって知りたいよ……お邪魔します」
ハルトは靴を脱いで、静かに廊下を踏みしめる。靴下を伝って、無数の木材の破片の感覚がハルトを貫く。
靴を履き直し、ハルトは再び廊下を歩いていく。時折ガラス片を踏み潰す音が聞こえ、靴下だった場合の危険性を訴えた。
「おい、何だこの臭い」
ハルトに続いてコウスケも、部屋に入ってくる。不快感を隠しもせず、静かに足を進めている。
廊下を通過し、リビングルームに足を踏み入れるハルト。壁に付けてあるスイッチを押すが、天井の蛍光灯が光ることはない。
「……ねえ、このマンション、そもそも停電なんてしてないんじゃないか? これ……」
「壊されてるとしか言えねえよな?」
コウスケが天井を見上げながら言った。
彼の目線を追いかければ、蛍光灯もまた粉々に押し砕かれており、天井もへこんでいる。内側から相当強い圧力をかけない限り出来ない所業である。
「一体何があったんだ?」
「少なくとも、俺が知ってる範囲だと、ここまで壊せるのは人間とファントムくらいだよ」
ハルトは割れた花瓶を見ながら断言する。
部屋の壁も、たまたま破壊の牙を逃れた柱くらいしか残っていない。
「お前、あえて避けてるだろ」
箪笥だったらしき瓦礫を撫でながら、コウスケは吐き捨てた。
「……何?」
「ファントムは確かに絶望を振りまく危険な奴らだが、ここまで過剰な破壊はしねえ。一番分かってんじゃねえか?」
「……」
「十中八九。参加者だろ。オレたちと同じ」
「……」
ハルトは唇を噛んだ。
だが、コウスケは続ける。
「忘れてねえだろ? サーヴァントのルールの一つに、人間を食らえばその分強くなれる。さっき他でもねえお前が、ここの異変に気付いてんだろ。ここに来るまでの間に、人っ子一人見た記憶がねえ。それなのに、壊された壁は見た。……なあ、これやべえんじゃねえか?」
「……」
否定の言葉が出てこない。
そして。
ハルトの前に、それは落ちてきた。
木製かと思われた、茶色の物体。
二本の長い部位がだらんと伸びており、その間には長い糸が無作為に伸びている。その間の丸い部位には、白い球体が二つ埋め込まれている。
それは……
人体___ミイラ。
「うわっ!」
その姿に、ハルトとコウスケは同時に悲鳴を上げた。
生気が抜けた目でハルトたちを
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