公私混同
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キラしている。決して他の人には見せないであろう彼女の表情を発動させる条件はただ一つ。
「相変わらず響ちゃんにお熱だね」
ハルトは思わず微笑んだ。
ハルトと可奈美が聖杯戦争に参加した最初の戦いで、チノは響に助けられた。その時、彼女は響に、同性ながら惚れてしまったようだった。
「アイツ今日はバイトだ。貧乏学生にアイツを養う余裕なんてねえよ」
「響ちゃんもバイトしているんだ」
「何のバイト?」
可奈美も興味を持って尋ねた。
コウスケはチノの顔を抑えながら、ため息をついた。
「コンビニだとよ。何でも、父親もコンビニで働いていたとかなんとか」
「どんな家庭事情だったんだろ?」
「さあな?」
「どちらですか? 響さん、どちらのコンビニで働いているんですか?」
知って何するつもりだ、とハルトは尋ねる口を閉じた。
すでにコウスケから響のバイト先を聞き出したチノは、可奈美へ振り返った。
「可奈美さん!」
「どうしたの?」
「私今日、シフトを離れます!」
「う、うん……え?」
その時、可奈美の目が点になる。
チノは引き続き、ハルトとコウスケに頼む。
「コウスケさん! 響さんのところに連れて行ってください! ハルトさんは、私をバイクに乗せて行ってください!」
「公私混同ってレベルじゃないな……」
「あはは……まあ、私はいいよ。どっちにしろ、この雨じゃ人も来なさそうだし」
可奈美の快諾に、チノはぱあっと顔を輝かせた。
「ありがとうございます可奈美さん! そうと決まれば、早速行動です!」
「せめて出前を優先させてくれないかな……響ちゃんのバイト先ってどこ?」
「見滝原博物館の近くのコンビニだぜ」
「あー……」
響と、見滝原博物館。
それは、響が中心になって行われた聖杯戦争の一幕をいやでも連想させる。
だが、そんな裏事情などを知らないチノは、水色の傘を持って店頭に立った。いつの間に用意したのか、同じく水色の合羽を着用している。
「こうして見ると、本当にチノちゃんって中学生には見えないよね」
「だよな。小学生には全然見えねえぜ」
「可奈美ちゃんはチノちゃんと同い年だったっけ?」
「同い年だよ」
店から出ていったチノを見送りながら、可奈美は答えた。
「今年で中三。……私は今休学中だし、ラビットハウスでは16歳ってことにしてるけど」
「ああ……」
ハルトは苦笑いを浮かべた。出前箱を背中に背負い、雨具を着込んで店の入り口に立つ。
「それじゃ、俺もそろそろ出前に行ってくるね」
「うん。気を付けてね」
「それじゃ、オレも帰ろうかねえ」
コウスケは可奈美にコーヒー代を渡して、ハルトに続こうとする。
「何だ、も
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