第2部
ランシール
試練の先に
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「いったあ!!」
前半身に強い衝撃を受け、私はうつ伏せの状態のまま、思いきり床に叩きつけられた。
「おお!! よくお戻りになられました!!」
エドガンさんの声が聞こえる。ゆっくりと起き上がると、全身が貫かれるように痛い。ぼんやりした頭で自分の手足や体に目をやると、いかに凄まじい格好になっていたか今頃になって気づく。手や足は魔物の攻撃でアザと傷だらけになっており、ズキズキと痛む頭に触れると手には血がついた。服もボロボロだが、それ以上に体を動かす度に激痛が走る。おそらく骨も折れているのだろう。
「大丈夫ですか? こりゃひどい怪我だ!! 早く手当てをしなければ……」
「ベホイミ」
エドガンさんが動くより早く、私の前に来てしゃがみこみ、呪文を唱えるユウリ。彼の落ち着いた声が、全身の怪我と緊張していた私の心を癒していく。
「あ……ありがとう」
彼が治療を施してくれている間、私は今の状況を振り返った。地球のへそで魔物と戦い、少しの油断でピンチに陥った。命の危険を感じた私は、咄嗟にこの神殿に戻れるペンダントを使い、帰還したのだ。
冷静さを取り戻し、はあ、と小さく息を吐く。今の私の心には、後悔と安堵が広がっていた。
「その様子だと、道半ばで倒れたってところか」
予想通り、とでもいう風にユウリが言い放つ。
その一言に、今まで我慢していたものが一気にこみ上げてきたかと思うと、たまらず私はその場で泣き出してしまった。
「うぅっ、うわぁぁぁ!!」
「!?」
私は脇目も振らず、堰をきったように泣き続けた。別にユウリの言葉に傷ついた、と言うわけではない。彼の一言はただのきっかけにすぎず、今まで一人で過酷な状況に遭っていたからか、緊張の糸が切れてしまったのだ。
ユウリや脇にいたエドガンさんも、急に私が泣き始めたので狼狽えたようだったが、穏やかな口調で私に話しかけた。
「でもよかったです、手遅れになる前に戻ってこられて。腕に自信のある方ほど、無茶するんですよ。引き際を知らないというか。それで結局帰ってこられなかった方を、私は何人も見てきましたからね。ミオさんは正しい判断をされましたよ」
エドガンさんのその言葉に、私は胸が締め付けられた。孤独だった戦いを誰かに理解してもらえたと思うと、殊更涙が溢れてきた。あのとき咄嗟にペンダントを使わなかったら、私は今頃ここにいなかったかもしれない。
「おい、もう終わったぞ」
治療を終えたユウリが私に声をかける。帰ってきて早々、ユウリはなにも言わず、すぐに私を回復してくれた。そのさりげない優しさが嬉しくて、思わず笑顔でお礼を言う。
「あっ、うん、……ありがとう、ユウリ!」
「……ふん。泣いてる暇があるのなら、もっと強くなるんだな」
そう言うと、彼はすっくと立ちあがり、マントを翻した。
「
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