第2部
ランシール
試練の先に
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ろ」
そういうと、彼は右手に持っている青く輝く宝玉を私の目の前に見せた。
「……これって」
「洞窟の最奥部に飾ってあった。おそらくこれが試練をクリアした者の証なんだろうな」
この光る宝玉はつい最近見たことがある。そう、テドンのイグノーさんがくれたグリーンオーブと、色は違うがそっくりだ。
「ひょっとしてこれって、オーブ?」
「そうだろうな。なんでこれがここにあるのかはわからんが」
あっけらかんとした様子で答えるユウリ。やがて彼と話しているうちに、これが現実だということが認識できた。
「本当にユウリなんだね! 帰って来られたんだね!!」
「あ、ああ」
「よかった!! 無事に戻ってきてくれて!!」
戸惑うユウリに対し、私は嬉しさのあまり彼に抱きついた。
「!?」
今度は夢と違い、触れても消えることはない。彼の体温が、私に現実感を与えてくれたように感じた。
「い……いきなり何なんだお前は!」
ユウリが困ったように声を上げたことに気づき、私は瞬時に彼から離れる。
「ごっ、ごめん! つい嬉しくて……。でも、無事に帰ってきてくれて、本当によかった」
そんな自分の言葉に、思わず涙ぐむ私。
「……お前に心配されるとは、俺もまだまだだな」
そう言うと、勇者は顔を背けた。
「でも、今のお前の気持ちならわかる」
「え?」
「いや、こっちの話だ」
どういう意味なのか分からないが、今はユウリが戻ってきてくれたことが何よりも嬉しいので、気にしないことにした。
「そうだ、ねえユウリ。途中白い仮面みたいなのあったよね? 変な声で『引き返せ』ってしゃべってて」
「ああ、なんか聞こえてたな。うるさいから全部壁ごと壊したら静かになったが」
「えっ!?」
さすがユウリ、ためらいもなくあの不気味な仮面を壊すなんて、普通じゃ判断しないようなことを容易くやってのける。ここでも私とユウリの違いを見せつけられた。
「壊しても大丈夫だったの?」
「? あんなもの壊すためにあったんだろ」
なんだかよくわからない理屈を平然と言う。私があれだけあの仮面に悩まされたというのに、彼はそれをためらいもなく壊した。そう考えるとやっぱりユウリはいろんな意味でも勇者なんだと言える。
「もしかして、その仮面を壊すのに時間かかってたの?」
「雑音はできるだけなくした方がいいからな」
ユウリは平然と仮面の声を雑音だと言い切った。ここまで来ると、なんだか仮面の方に同情してしまう。
すると、バタバタと慌てたような足音が聞こえてきた。
バタン!!
「ミオさん、何があったん……ユウリさん!?」
勢いよく扉が開かれ、雪崩れ込むようにエドガンさんが入ってきた。
「そ、それはブルーオーブ!! まさか、本当に最奥部まで到達したのですか!?」
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