第2部
ランシール
試練の先に
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と目の前にある高価そうなテーブルを眺めると、そこに反射される自分の顔が写っている。なんてひどい顔をしているのだろうと、深い溜息を吐いた。
外はすっかり夜の色に塗りつぶされており、いつしか自分の姿すら闇に染まりそうなほど、辺りを照らすランプの光が弱くなっていることに気づく。
あれ、私今まで、こんな暗闇の中で何してたんだっけ……?
すると突然、部屋の扉を開ける音が耳に届いた。
「何不細工な顔をさらしてるんだ、鈍足」
「ユウリ!!」
がばっと顔を上げ、無事な姿の彼を確認すると、思わず立ち上がる。
「よかった!! 無事に帰ってこれたんだね!!」
けれど、ユウリは無愛想な表情を微塵も動かさず、こちらの声にも反応しない。訝しげに思い、彼に近づこうとするが、
「!?」
近づけば近づくほど、なぜか彼は遠ざかるではないか。
「な、なんで?!」
まるで水の中をもがくかのように手を動かすがけして彼には届かず、やがてユウリの姿は闇の中に沈んでいった。
「待って……、行かないで!!」
虚空を仰ぐ自身の手を見つめながら、私は絶望に打ちひしがれる。
そこで、はっと目が覚めた。
「夢……?」
気が付けば、私はソファーの上で寝ていた。額は汗でびっしょりになっており、呼吸も荒かったのか、若干喉が痛い。
いつから寝ていたのだろうか。だが起きた途端、未だ夢でしか彼の姿を捉えることが出来ないもどかしさと寂しさで、無意識にあふれる涙を必死に拭った。
「ユウリ……。早く帰ってきてよ……」
ソファーに横になったまま天井を見上げながら、誰にともなくつぶやく。けれど当然ながら、帰ってくる言葉はない。
鼻をすする音がやたら耳に響いて聞こえてくる。それが余計に孤独感を強くさせ、涙が一向に収まる気配がなかった。
もう、どれだけ待っているか時間の感覚すら掴めない。何も出来ない苛立ちすら沸いてこない。そんな中、最悪の状況が思い浮かびそうになり、私は必死に他のことを考える。そんなことを、何度繰り返しただろうか。
やがて、がちゃり、と扉が開く音が聞こえた。
エドガンさんかな、と思い、急いで体を起こし誤魔化すように涙を拭く私。
「ごっ、ごめんなさい! ちょっと悪い夢を見て……」
「誰に話しかけてるんだ、鈍足」
けれど、私の予想とは全く違う方向から声が聞こえた。
まさか、と思いながらも声のする方に顔を向ける。
「……こ、これも夢……?」
つい今しがた見た夢と同じ姿で現れた勇者は、呆れ……というより不思議なものを見るような顔でこちらを見ていた。
「さっきから何を訳のわからんことを言ってるんだ。お前は」
私は立ち上がり、恐る恐る彼に近づいた。
「ほ……本当に本物のユウリなの?」
「本物……? 当たり前だろ。ほら、見てみ
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