第2部
ランシール
試練の先に
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シールの未来のため、お互いに議論を交わしはじめた。
それからさらに、どのくらいの時間が経っただろうか。窓越しに見える空はすっかり茜色に染まり、気づけばエドガンさんが戻ってきて部屋のランプに灯を灯してくれていた。
「ユウリさんは、まだお戻りにならないのですか?」
エドガンさんの言葉に、私とへそにゃんは同時にはっと気づく。結局これと言った案が思い浮かばず、最終的に今作っている農作物を流行らせてみてはどうかという凡庸な話になっていたところでエドガンさんの一言が耳に入り、我に返ったのであった。
「そういえば……、まだです」
もうかれこれ五時間は経っている。夜の帳が下り始めるとともに、私の不安も急激に広がってきた。
いくらレベルの高いユウリでも、一人で地球のへそに向かうのは無謀だったのでは? そんな後ろ向きな思考が頭をもたげてくる。
「大丈夫ですか? ミオさん」
へそにゃんまでもが心配して声をかけてきてくれる。
「……はい。エドガンさん。すいませんが、ユウリが戻るまでここで待ってもいいですか?」
「もちろん。ここはもともと地球のへそに挑む人以外の仲間が待機したり休息したりする、いわゆるゲストハウスとして使われておりましたからな。好きなだけ使ってくだされ」
「ありがとうございます」
エドガンさんのご厚意に、私は心から感謝しお礼を言った。
「ごめんなさい、ミオさん。ボクも一緒に待ってあげたいのですが、定時を過ぎてしまったんで、そろそろ失礼させてもらいます」
そういうと、へそにゃんは申し訳なさそうに、そそくさと先に帰っていった。
「私も明日の仕事の準備がありますので、自分の部屋に戻ります。何かあれば遠慮なく呼んでください」
「はい、ありがとうございます」
二人が帰ると、外はもう真っ暗になっていた。壁に掲げられたいくつかのランプがぼんやりと辺りを照らし、神殿にはやや不釣り合いなアンティーク調のソファーとテーブルが部屋に薄暗い影を落としている。
「ユウリ、遅いな……」
窓の外を眺め、私は誰にともなくぽつりと呟く。
誰もいない室内に一人だけいると、取り残されたように感じる。それだけでも心細さを感じるのに、こんな時間まで地球のへそに一人で向かっているユウリは、いったいどんな心中なのだろうか。
自分も経験したからわかる。魔物と戦うよりも恐ろしいのは、仲間が傍にいないことだ。
まあ、ユウリはもともと一人で戦うのは慣れてるみたいだし、私みたいに心細くなったりはないかもしれないが、もし万が一怪我をして、回復する魔力もなかったら、と思うと、いくらレベルの高いユウリでも心配になってしまう。
テーブルを囲うように置いてあるソファーの一つに腰を落とすも、ただ待っているしかない自分に、段々苛立ちを覚えてくる。ぼんやり
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