第2部
ランシール
試練の先に
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お前が途中で帰ってくるのは予想通りだ。次は俺が必ず試練をクリアする」
自信満々にそう言い放つと、私が地球のへそに行くときに通った扉の前まで進む。
「ユウリ、ペンダントは……」
「そんなものいらん」
にべもなくそう言うと、ユウリは振り向きもせず、扉をゆっくりと開く。そしてそのまま地球のへそへと向かって行ったのだった。
「ユウリさん、本当に大丈夫なんですか?」
エドガンさんが心配そうに私に尋ねる。
「大丈夫です。ユウリならきっとクリアできますよ」
口ではそう言ったが、内心不安でいっぱいだった。何しろ、奥にいたあの謎の白い仮面のことは結局分からずじまいだ。もしあのまま先に進んでいたら、どうなっていたんだろう。けれど好奇心よりも自己防衛の方が働いてしまった私に知る術はない。
「そうだユウリ、白い仮面に気を付けて!」
急な忠告に、ユウリは一体なんのことを言ってるんだ、という顔をしたが、すぐにいつも通りの淡々とした表情で、
「すぐに戻ってくる」
そう言ってそのまま扉を開け、部屋を出ていったのだった。
だが、ユウリが地球のへそに挑んでから、およそ三時間。彼はいまだ帰って来ない。
エドガンさん曰く、私が地球のへそに挑んだのも、このくらいの時間が経っていた。
そう考えると、今頃ユウリは、私がリタイヤした場所まで到達しているのだろうか。
私は広い室内にあるソファーに腰かけたまま、ずっとユウリの帰りを待っている。
エドガンさんはというと、途中神殿の近くにある農場で畑の様子を見に行ったまま、未だに帰ってこない。昔はランシールの神官だったが、訪れる者がほとんどいない今では、神殿の管理兼観光業の責任者としてすっかり定着しており、仕事の傍らとして、時々こうして畑を耕しては、生計を立てているのだそうだ。
代わりに今この場には、猫の着ぐるみ……もとい、へそにゃんがいる。
私が地球のへそに言っている間も、ちょこちょこエドガンさんは他の畑の方へ行っていたらしく、たまたまへそにゃんと交代したときに私が戻ってきたそうだ。
そのへそにゃんはというと、別にもうへそにゃんでいる必要はないと思うのだが、なぜか着ぐるみを着たまま、室内の隅の棚にある調度品をこれでもかというほど磨いている。
「あのぅ……、よかったら何かお手伝いでもしましょうか?」
突然私に話しかけられたのか、びくん、と激しく体を震わせるへそにゃん。こちらを振り向くなり、ぶんぶんと勢いよく首を左右に振る。
「めっ、滅相もない!! 勇者さんのお仲間にそんなことさせるわけには行かないですにゃん!!」
「……にゃん?」
いつのまにかへそにゃんの語尾が変わっている。しかも声色が立派な成人男性そのものなので、なおさら違和感を覚えた。
「あ……、あの!! 違うんで
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