第一章
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夫が浮気したと思ったら
橋本真奈美一六九の長身ですらりとしたスタイルに小さな頭と栗鼠を思わせる口元に色白で黒髪を短くした彼女はこの時だ。
いきなり家の電話に出て来た若い女性の声の主に言われた言葉に戸惑って返した。
「あの、何かの間違いでは?」
「間違いではありません」
声の主は怒って言った。
「私はお宅のご主人に結婚しようと言われて」
「お付き合いしていてですか」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
「妊娠したんですよ」
「そしてですか」
「後でご主人が家庭があるって知りまして」
「今からですか」
「今私は東成区の八条レストランの窓際の一番奥の席にいます」
「あそこですね」
「はい、お宅天王寺区ですよね」
声の主は真奈美の家の住所の話もしてきた。
「それも東成区のすぐそこの」
「それもそのレストランの傍です」
チェーン店のファミレスのそこのというのだ。
「歩いて行けます」
「じゃあすぐに来て下さい」
一も二もない返事だった。
「ご主人がおられないなら」
「わかりました、まずはそちらにお伺いしますので」
何が何かわからないままだ、真奈美は声の主に答えた。
「少し待っていて下さい」
「絶対に来て下さい」
こう言うとだった。
声の主は一方的に電話を切った。そして。
真奈美は外に行く準備に入ったがここで小学生五年の娘の万土香自分によく似た顔立ちだが黒髪を伸ばしている彼女が言ってきた。
「絶対嘘よ」
「お父さんが浮気したなんてね」
真奈美は娘にこう返した。
「絶対にね」
「何でお父さんが浮気出来るのよ」
万土香は真剣な顔で言い切った。
「お腹うんと出て髪の毛薄くなって脂ぎっていて」
「それでいつも汗かいていてね」
「もてる外見じゃないわよ」
「趣味はお酒飲んで阪神の試合見て読書してで」
「あとゲームでしょ」
「昔からそうよ」
「お仕事帰ったらそういうことのお話ばかりで」
そうした父でというのだ。
「残業ないと帰り早いし」
「体臭も加齢臭以外しないわ」
「それで何で浮気出来るのよ」
「お母さんもそう思うわ」
「絶対に間違いよ、けれど相手の人やたら怒ってるし」
「ちょっと行って来るわね」
娘にこう言って留守番を頼んでだった。
真奈美はそのファミレスに行った、パートが今日は休みなのをよかったと思いながら夫にそれは絶対にないと考えていた。
そしてファミレスに行ったが。
その席にいる若い女性、ホステス風の若い茶色の長い髪の毛い面長の顔に切れ長の目を持つ派手な服装の女性にだった。
声をかけるとだ、女性は驚いて言ってきた。
「貴女誰ですか?」
「えっ、橋本真奈美ですが」
「あの、原清弘毅さ
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