第三十章 わたしたちの世界、わたしたちの現在
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、特に機器機械の類は見当たらない。
アサキたち三人は、きょとんとした顔で周囲を見回した。
「探しても見付からないですよ。というよりも、これまで通ってきたすべてがそうなのですから」
優しく落ち着いた、だが少し抑揚の乏しい、ヴァイスの声である。
「へ? このもくもくもわもわしたのが、コンピュータなのかよ?」
理解の範囲をどれほど超えているのか、この中で一番ぽっかんと口を開けていたカズミであるが、目をぱちぱち瞬かせると、ぽっかんとしながらも一番に質問の言葉を吐いた。
「そうですね。最中心の主電脳層は別で、少しはあなたたちも知るような機械部品もあります。守護が厳重で、簡単には行かれませんが。でもここも、機械室でもありますが機械本体の一部でもあるのです。一度、あなたたちにもお見せしようと思いまして、お連れしたのです」
「ヴァイスちゃん、この霧みたいなのは、なんなの?」
アサキが尋ねる。
尋ねた後に、自分で、ちょっと間抜けな質問かなとも思った。
だって、これが超次元量子コンピュータの機体なのだと、説明されたばかりなのに。
でもやっぱり、これが機械の一部だなんて、どうしても思えなかったから。
「ふんわりした霧が機械なのが不思議ですか? これは、反応素子をエーテル式で作っているためです。空間そのものをコンピューティングに使っているから、流れと重ねで、霧状に濁る。……あなたたちは誕生したばかりとはいえ、知識は二十一世紀だから、コンピュータというと半導体を使った物を想像するでしょう?」
「いや、そもそもコンピュータってなに、ってレベルなんだけど、あたし。ハンドータイなんて聞いたこともねえや」
口を挟むのはカズミである。
そんなことよりアサキは、ヴァイスの発した他の言葉に、引っ掛かっていた。
生まれたばかり、というところに。
ヴァイスの説明が真実ならば、地球は一千億年以上も前に消滅している。
その後も、仮想世界は稼働を続けていた。
何十億年という無限に近い時間を、何十回もやりなおし、そんな、何十回目だかのある仮想世界の中で、自分は生まれた。
仮想世界と、現実とは、時間が同期している。
つまり、自分が生まれ、まだ十四年。
話の規模を広大に思うほど、無限の時間の中に一瞬にもならない自分の人生。それがちょっと怖く感じられたのである。
たくさんのことのあった、他人は笑うかもしれないけどそれなりに豊かな人生、そう思っていたのに。
3
アサキがそのようなことを考えていた間にも、ヴァイスの説明は続いている。
「……つまり、なにかの存在状態に対して0と1とみなし判断に利用すのが古来のコンピュータ。重ねという要素が加わったのが、あなたたちの知
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