第三十章 わたしたちの世界、わたしたちの現在
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も、定まらない。
考えられない。
だって、なにを思えばいい?
こんな、状況で。
なにも知らず、死んでいくことが出来ていたら、どんなによかっただろう。
仮想世界の住民であったまま、仮想世界の中で、平和に生きて、死んでいくことが出来ていたら。
そもそも、何故わたしたち?
何故、わたしたち三人が、こんな目に遭わなければならない?
何故……
2
まるで綿菓子にも見える、猛烈に濃い霧の中。
それでも遮られずにお互いの姿がはっきり見えるし、遥か先までもが見えている。
それは、魔力の目を通して、すべてを見ているからである。
彼女たちが薄々と気が付いていた通り、この人工惑星には照明の類はいっさいない。
漆黒の世界だ。
魔力の目により見えている広大な空間を、ヴァイス、アサキ、治奈、カズミ、四人の少女たちが、猛烈な速度で降下し、次々と綿菓子雲を突き抜けている。
ここは人工惑星の内部。
超次元量子コンピュータを見せようと、ヴァイスが招き入れたものだ。
先ほどまでいた部屋でヴァイスが、いつの間にか手にしていた小さな機器のスイッチを押した瞬間、ストンとみなの身体が床を突き抜けて、その瞬間にはここにいた。
雲の中を、なんの摩擦も抵抗もなく、もくもくとした綿菓子の中を、凄まじい速度で落下していたのである。
まるで透明なエレベーターに乗っているかのような、重力に対して正の姿勢。
アサキたち三人は私服姿で、みなスカートなのだが、この猛スピードにめくれ上がるどころか揺らぎすらもしていない。
真空状態だからである。
この人工惑星は、全ての設備を半永久的に稼働させるために、あえて大気を纏わせないようにしているためだ。
落下した瞬間こそ慣性の法則でスカートがめくれそうになったが、それを手で押さえると身体に貼り付いたままもうはためくどころか震えることもない。
酸素のない中で、ヴァイスがなんともないのは、彼女がもともとこのような状況下での活動を想定して作られた、生体ロボットだからである。
アサキたちがなんともないのは、仮想世界において魔法使いであったという、その陽子式そのままにこの現実世界においても物理構成されているからである。
と、そのようにヴァイスからは説明を受けている。
聞こえる音やら呼吸やらの感覚にずっと違和感を抱いていたアサキなので、そう説明されれば納得するしかない。
しばらく、重力に引っ張られる以上の猛スピードで落下を続けていた四人であるが、突然、ぴたりと静止した。
……着いた?
でも、これまで幾層も突き抜けて来た綿菓子雲の、色がより濃くクリームに近くなったという程度で
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