第三十章 わたしたちの世界、わたしたちの現在
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の道を開こうとするのを阻止しようと、万さんたちたくさんの魔法使いが死んだ。
わたしの両親、修一くん、直美さんまでが、人質に取られて、そして……
生き死にだけじゃない。
攻防の過程で、わたしは自分が人間じゃないことを知った。
それでも人間であるとして、戦い続けた。
みんなと暮らす世界を守るために。
戦った。
でも、その世界が、作り物だっただなんて……
わたしたちの存在が、思いが、単なるデータだったなんて……
そして、現実の世界は、こんなことになっているだなんて……
「仮想世界に対しての、現実世界……つまりは『絶対世界』ということじゃな。ここは」
治奈の、いまにも泣き出しそうな顔、ため息混じりの声。
嘘であって欲しい。
夢であって欲しい。
とでも、いいたげな。
でも、
アサキは思う。
ほぼ、間違いのないことなんだろうな。
ここまでこの少女が、ヴァイスちゃんが、語ったことは。
ここが、現実の世界だということは。
ヴァイスちゃんが嘘を付いているとは、わたしには思えない。
そもそも、なんの意味がある?
嘘など付いてなんの得がある?
わたしも、至垂所長との戦いの中で、デジタルの世界が崩壊し掛けた様を目撃している。あの時は、さっぱりなんだか分からなかったけど、そういうことだったんだ。
この世界のこの周辺、奇妙な造りの建物は小さな町を作れるほどに広大な規模だ。
にも関わらず、数人の少女たち以外は誰もいない。
もしも遥か未来というのが嘘で、わたしたちは、わたしたちの世界、わたしたちの時代に生きているのだとしたら、こんな不自然な話はない。
こんな大掛かりなドッキリを、誰がなんのためにする必要がある?
だからきっと、正しいんだ。
ヴァイスちゃんのいっていることは。
嫌だけど……
わたしたちが生きていた世界が、コンピュータの中だったなんて、既に本当の地球はない、宇宙も終わり掛けているだなんて、嫌だけど……
はあはあ、
アサキの息が、荒くなっていた。
ここには、そもそも酸素などないというのに。
つまり、呼吸などしていないのに。
どういう仕組みなのかは分からないが、とにかく心が疲弊して、視界もぐるぐる回って、呼吸荒く倒れそうになっていた。
改めて、壁に助けを求め寄り掛かると、涙目を袖で拭った。
はっ、とため息を吐いた。
それでショックが微塵も薄らいだわけではなかったけれど。
まだ、心臓がドキドキしている。
酸素のない世界で、なんのために存在する心臓なのかは、分からないけど。
視界が回って、考えもぐるぐるして、なにもか
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