第2部
ランシール
地球のへそ
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ランシールに行く途中船で船員さんに聞いたのだが、『地球のへそ』という名の由来は、その場所が世界の真ん中に位置しているからなんだそうだ。
そのあと世界地図で確かめたら、確かに真ん中あたりに描かれている。
昔の人は着眼点が違うなあ、なんてことを暢気に考えている間に、神殿の廊下の突き当たりまでやってきた。そこにあるのは一枚の大きな扉のみで、見ているだけで緊張感が漂う。一人ということもあり若干心細さを感じながらも、私は意を決して扉を開けた。
「うわぁ、すごい……」
重い扉の向こうはすでに外へと通じており、一陣の風が足元を吹き抜ける。
そして最初に目に飛び込んだのは、まばらに草が生えた地平線の上にどっしりと乗った、とてつもなく巨大な岩だった。
「あの岩に向かえばいいのかな?」
神殿から伸びる粗末な道を歩き続けるうちに眼前に広がるのは、大きな岩というより平地に突然現れた山のようだった。その圧倒的な存在感に、私は思わず目を見張った。
すぐそばまで近づくと、岩壁に人一人入れるくらいの大きさの亀裂が入っている。道はその亀裂へと繋がっており、きっとここが地球のへそへの入り口だろう。
洞窟とも言えるその入り口を覗くと、意外に中は広い。私は恐る恐る、内部へと足を踏み入れた。
中は真っ暗というわけではなく、この岩の持つ成分に発光作用があるのか、所々ぼんやりと光っている。上を見上げると天井の岩壁はちょうど私の背丈よりやや高いくらいしかなく、ユウリが入るには少し狭そうだ。
そもそもこの大岩はどうやって掘り抜いたのだろう。もしくは自然にできたものなのだろうか。
私が今歩いている洞窟は、亀裂に沿ってどこまでも続いており、先へ進むにつれどんどん広くなっていく。天井も次第に高くなり、人の手の届く高さよりもずっと高いところまで削られていた。
そのあまりにも非現実な景色に、私は孤独感よりも好奇心の方に心を支配されていた。
この先に何があるのか、どんな景色が待っているのか、得体の知れない高揚感に胸を躍らせる。
だがそれが、一瞬の判断に迷いを生んでしまった。岩壁のすき間から突然、魔物が現れたのだ。
魔物の先制攻撃に、私は避けきれず足に一撃を受けてしまう。
しまった、ミスした……!
幸いたいした怪我ではないが、薄暗い洞窟は、攻撃をした魔物の位置を正確に視認することができず、判断を鈍らせる。
そうだ。こんな状況だからこそ、視覚だけでなく、気配を感じとらなければ。
そう考え、あえて私は目を瞑る。さっきは意識してなかったので避けきれなかったが、星降る腕輪を身に付けているので、もし反応が遅くなってもなんとか避けきれるはず。
魔物の気配を、直感で感じろ。ほんの僅かな動きが、空気を歪め、風となり、自分の肌へと伝わるはずだ。
「!!」
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