保護
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友奈はそう言って、台所の収納からそれを取り出した。
うどんのパック。袋が潰れる音とともに、友奈はそれを台所のまな板に置いた。
その時。
「うっ……」
聞こえてくる、アカネの苦悶の声。振り向くと、気を失っているアカネがゆっくりと首を振っていた。全身から汗を吹き出しながらもがいている。
真司は彼女を見下ろしながら、頭を掻きむしる。
「何か、すげえ汗出てるぞ! どうすんだ?」
「分からないよ! もしかしてさっき、ムーンキャンサーに何かされたんじゃ……!」
「クソッ! なんで色々知ってそうな子が真っ先に帰っちゃうんだよ……!」
真司は嘆きながら、部屋の中を左右に歩き回りだした。
友奈はアカネの傍で腰を落とす。
どんどんアカネの汗が増えていく。そして、汗の量が増えるのに比例して、アカネの表情の苦悶が増していく。
「と、とりあえず拭こう! こういうのは、まず拭けばいい気がする!」
友奈はアカネの額に乗せたタオルを掴み、再び水道で濡らす。絞り、余分な水分を押し出した。
即座にアカネの顔の汗を拭きとったが、それでも彼女の容体は変わらない。
友奈は掛布団を開き、彼女の襟元のボタンに手をかける。だが、即座にその手を止めた。
「……あ」
「ん?」
絞ったと同時に、友奈は凍り付いた顔で真司を見つめた。
「し、真司さん! 今からアカネちゃんの体を拭くから!」
「お、おう……?」
「だから! ちょっと、ここにいたらまずいよ!」
「へ? ……て、ああっ!」
合点がいった真司は、慌てて立ち上がる。
「わ、悪い!」
「本当だよ!」
友奈は顔を赤くしながら叫んだ。
友奈はアカネにべっとりとつく汗を拭いとる。だが、どれだけ拭っても汗は切れない。
シャツを襟元から下まで開き、引き続き汗を拭きとっていく。
その中で、アカネの胸元にそれを見つけた。
「これは……?」
アカネの首から下げられているペンダント。彼女が文字通り肌身離さずに所持しているそれは、果たして量産品とは思えない神聖な雰囲気を宿していた。
それは勾玉と呼ばれる、古来日本の伝統品。友奈は彼女の首から、そのペンダントを外してみた。
「何だろう……これ?」
石でできた勾玉だが、それは明らかに自然の石とはまた別のもので作られていた。アカネの体温に触れて温まっていたはずなのに、それは氷のように冷たかった。
その時。
「うわっ! 牛鬼!? どうしたの!?」
友奈は反射的に両手で勾玉を挟んで掲げた。
スマホから飛び出してきた白い妖精、牛鬼が友奈の手から勾玉を奪い取ろうとしていた。
単純に見たい程度の好奇心ではない。無表情なのに、牛鬼の雰囲気から
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