第2部
ランシール
観光の町ランシール
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「ここが神殿……」
町の男性に教えられてやってきた神殿の入り口は、白を基調とした円柱状の石柱が何本も立ち並んでおり、その中心に粛然とした大きな扉が構えてあった。
一見入るのをためらいそうな建物だが、壁のいたるところに子供の落書きみたいな文字で、『ようこそ・地球のへそへ』と羊皮紙で書かれた張り紙が貼ってあり、虚脱感あふれる雰囲気を醸し出していた。
「なんだか、ここで本当に自分が強くなれるのか不安になってきた」
「……珍しくお前と同意見だ」
どうやらユウリも、私と同じように不安を感じているらしい。
想定外のことに暗雲が立ち込める中、意を決したユウリが先に歩み出て、目の前の扉をノックする。
「おーい、誰かいないか?」
ユウリが大声で尋ねると、しばらくして建物の中から物音が聞こえてきた。何やら慌てているらしく、時折バタバタという足音と、何か物にぶつかったような音が聞こえてくる。
「お前に劣らないくらいのおっちょこちょいな奴がいるんだな」
物音を聞いたユウリが感心するようにつぶやく。何か言おうとした時、神殿の扉が開いた。
「おっ、お待たせしました……! ようこそ地球のへそへ!」
『………………』
そういいながら現れたのは、二足歩行で立つ猫の姿だった。
いや、よく見ると、猫の着ぐるみをかぶっている人間だった。
全く予期していなかった事態に、私とユウリの目が点になる。
「あ、あのー、どうしました?」
時が止まったかのようにピクリとも動かない目の前の二人を見かねたのか、着ぐるみ人間は戸惑いながらも尋ねてきた。
困惑しているのは私たちの方である。なぜ神殿で着ぐるみを着た人が出迎えてくれるのだろうか? そのあまりにも理解しがたい出来事に、私はいまだに思考回路が追い付いていない。
「……一応聞くが、その着ぐるみはいったいなんだ?」
ようやくユウリが、声を絞り出しながら質問した。着ぐるみの彼(声からして男性だろう)は、動くことのないガラス玉の目を輝かせながら、
「着ぐるみなんてとんでもない! ボクはここの観光地のマスコットキャラ、『へそにゃん』! 地球のへその真ん中から生まれたんです!」
そう言って彼は両手を前に出し、招くようなポーズを見せた。もう何が何だかわからず、突っ込みが追い付かない。
すると、横でユウリが呪文を唱えようとしているのが目に入ったので、私はさすがにそれはまずいと思い、すぐにユウリの手首を掴んで制する。でも気持ちはわからなくもない。
「あのー、私たち、ここが観光地とは知らず、修行のためにここへ来たんです。地球のへそに行けば強くなると聞いたんですが、ここはそういう場所ではないんですか?」
私が説明すると、着ぐる……へそにゃんは戸惑ったようなしぐさを見せた。
「え、えーと……、ごめんなさ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ