第2部
ランシール
観光の町ランシール
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い、マスコットのボクにはわからないので、今責任者を呼んできます!」
想定外のことが起きると対処できないという、まるで仕事を始めたての新人さんのようなセリフを吐いたへそにゃんは、扉を開け放ったまま、慌てた様子で神殿の奥へと戻っていった。
二人でじっと待っていると、ほどなく足音が聞こえてきた。今度は複数。やって来たのは、一人はへそにゃん、もう一人は初老の男性だった。
「初めまして、私はここの神殿の最高責任者で、エドガンと申します」
一歩前に出て、丁寧にお辞儀をするエドガンさんは、神殿の責任者という割には、上下ともシンプルな麻の服という、ラフな格好をしている。それに、肌も健康的な小麦色で、まるでその辺で畑でも耕してるんじゃないかと思うくらい身近な存在に感じられた。
「俺はユウリ。ここにくれば修行が出来ると聞いてやって来た」
ユウリの自己紹介の後、私も簡単に挨拶をした。すると、エドガンさんは顔を曇らせる。
「修行、ですか……。すいませんが、あいにく今はこの通り、観光地として成り立ってまして、昔のように修行の場として提供差し上げるわけにはいかないのです」
「観光地……?」
周りを見回しても、観光客どころか往来する人なんて私たち以外に誰もいない。
私が腑に落ちない顔をしていると、ユウリが口を挟む。
「こんな誰もいない辺境の町が本当に観光地で生計を立てているのか?」
その言葉を聞いた途端、エドガンさんのこめかみに、ぴくりと血管が浮き出るのを見逃さなかった。
「申し訳ありませんが、修行を目的としていらっしゃるというのなら、どうかお引き取りください。観光としてなら一向に構いませんが」
そういうとエドガンさんは、俯きながら私たちに背を向けた。
「まっ、待って下さい!! 私たち、魔王を倒すためにどうしても強くなりたいんです!!」
私の叫びに、エドガンさんはぴたりと足を止める。
「今、なんとおっしゃいましたか?」
そう言うと、真剣な面持ちでこちらを振り向く。
「俺たちは魔王を倒す旅をしている。……俺はオルテガの息子だ」
「まさか……あの英雄の……!?」
ユウリの言葉に、エドガンさんは信じがたい表情で、
「魔王を倒す……。あの英雄の息子さんなら、このご時世でもそう考えるかもしれませんね」
そう言ってため息を吐いた。
横に立っているへそにゃんも、責任者のただならぬ様子に困惑しているようだ。
だがやがて、何かを決意したように肩を下げる。
「本気でそう考えるのでしたら、どうぞお入りください。観光でないのなら、入場料など結構ですので」
エドガンさんは、先程とは一転した態度で私たちを神殿の中へと招き入れてくれた。
先に中へ入るエドガンさんの後ろをついていくと、へそにゃんもあとからついてきた。
神殿の内部
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