第2部
ランシール
いざ、ランシールへ
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テドンを離れたあと、私とユウリは次の目的地であるランシールの町に向かうため、ヒックスさんとともに船長室で今後の進路を話し合うことにした。
なぜならランシールという町自体、博識なユウリでもあまりよく知らないらしく、正確な場所もわからないという。
そこで長年海を渡り歩いたヒックスさんなら何か知っていると思い、ランシールについて尋ねると、何度も訪れたことがある、と期待以上の返事をもらうことができた。
「なるほど。『地球のへそ』に行かれるのですか。あそこはもう何年も、試練を受けた者はいないと聞きます。けれど魔王が現れたばかりのころは、皆こぞってランシールに向かわれましたよ。当時私も試練を受ける冒険者を乗せて、何度も町を往復してました。けれど、その中の誰も、試練を突破できた人はいなかったと言われています」
カリーナさんの言うとおりだ。そして今は、何年もその修行場に足を運ぶ者がいないことに驚く。
「今時そんな場所に行く奴なんて、俺たちぐらいのもんだろ」
皮肉交じりに言い放つユウリ。魔王が復活して二十年近く経つが、すでに人々は半ば諦めにも似た感情を持っている。それでも魔王が復活してすぐの頃、人々は魔王討伐に次々と乗り出したようだが、魔王どころか魔王軍の配下の魔物相手ですら一矢報いることができなかったという。
そこで、人間が魔物に対抗できる力を得るために、各地で自身のレベルを上げる修行場ができた。『地球のへそ』もその時に話題となり、世間に広く知れ渡ることになったと言われている。
「元々は、ランシール大神殿の神官が修行のために使っていたそうで、何百年も前からあったそうですよ。魔王が復活してからは、すっかり冒険者御用達になってしまったみたいですが」
「ふん。神官が挑む修行場だったということは、大した場所ではなさそうだな」
どうやら期待外れだったらしく、ユウリは鼻白む。そして私の方に視線を移す。
「それならまずお前から先に試練を受けろ」
「え、私?」
「お前ぐらいのレベルでも突破できそうな修行場だから譲ってやる。それにもし俺が先に受けて突破したら、意欲がわかないだろ」
突破できる前提で言っている勇者に、私は複雑な顔を向ける。
まあ、本当にそうなったらユウリの言う通りやる気が萎えそうなので、お言葉に甘えて先に試練を受けさせてもらうことにした。
けれど言われっぱなしも嫌なので、皮肉を込めて言い返す。
「別にいいけど、もし先に私が突破しちゃったらどうする? ユウリの出番なくなるよ?」
そう意地悪く言ったのだが、ユウリは急に口とお腹を手で押さえ、肩を震わせているではないか。
「お前……、こんなときに笑わせるな……。腹が痛い……」
「……冗談言ったつもりなんかないんだけど!?」
完全にバカにしているユウリに対し必死で不平不満
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