第2部
ランシール
いざ、ランシールへ
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っていたら、視界の先にぽつぽつと家が見えてきた。
「もう少ししたら、ランシールだ」
林の中の街道を抜けると、そこはもう町だった。家同士の間隔が空いており、あちこちに田畑が広がっている。中には牛や羊などが放牧されており、至ってのどかな風景だ。そんな牧歌的な雰囲気を醸し出している町並みから少し離れたところに、場違いなほど大きな神殿風の建物が聳え立っていた。
「何あれ? 随分大きな建物だね」
「あれが地球のへそへの入り口なんじゃないのか?」
二人して建物について疑問を抱いていると、偶然通りかかった男の人が私たちを見て声をかけてきた。
「こんにちは。旅人さんかい? こんな辺鄙なところまでよく来たね」
男性の朗らかな挨拶に気安さを感じた私は、目の前の神殿について尋ねることにした。
「あのー、すいません。あそこにある大きな建物って何なんですか?」
「あー、あれね。確かあの神殿の先に行くと、地球のへそっていう場所に行けるんだよ」
やっぱりユウリの言うとおり、あそこに地球のへそがあるらしい。
「やっぱりそうだったんですね。私たち、今からそこに行こうとしてるんですけど、どうやったら入れます?」
「どうやってって……、入場料払えば誰でも入れるけど?」
『入場料!?』
想定外の単語に、思わず私たちの声が重なる。
試練を受けるのに入場料が必要って、いったいどういうことだろう?
「おい、お前。地球のへそっていうのは、戦士や魔法使いなどの冒険者が、試練を受けるための修行場なんじゃないのか?」
ユウリの当然の問いに、男性の方が不思議そうな顔をする。
「ああ、確かに十年くらい前までは、そういう目的で来てた人も多かったみたいだけどね。でもだんだん人も来なくなって、今は観光地になってるよ」
「観光地!? 一体どういうことだ!?」
「ひっ!? 何だ君は!?」
「わわっ、待ってユウリ!!」
ユウリは憤然とした様子で男性に掴みかかろうとしたが、慌てて私が止めに入る。
男性はこれ以上関わり合いになるのは御免と思ったのか、そそくさと逃げるように去っていった。
「魔王がいる世界が当たり前になってるからって、修行場までなくなるのはおかしいだろ!」
「確かに、ヒックスさんは何年も試練を受ける人はいないって言ってたけど……。まさか観光地になってるだなんて……」
未だ納得できないユウリと同様、私も同じ事を思いつつ、やるせなさを感じていた。
と、ここで色々悩んでいても始まらない。私たちは神殿の入り口と思しき場所へと向かうことにした。
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