第122話『晴風』
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父さんの隠蔽は継続中だった。
*
夢を見た。と、いつもの導入の通り、晴登は例の草原に立っていた。天気は晴れ。特筆すべきことはないほど、普通の空模様だ。
この夢にも慣れたものだ。さて、今回はこれからどのように天気が変わるのかと、ボケーッと空を見上げていたくらいに。
おかげで、背後にいる人物に気づかなかったのだが。
『久しぶり』
「うわっ!?」
声をかけてきたのはアーサーや影丸と同じくらいの年齢の青年だった。まさか自分以外に人がいると思わず、後ずさるぐらい驚いてしまう。……いや、前にもいたことがあったような。
そして現れた人物の顔をまじまじと見ていると、どことなく知っている顔に見えた。
「若い、父さん……?」
そう。髭も皺もないが、その顔は間違いなく父さんのものだった。晴登が生まれた頃のアルバムで見た顔よりもさらに若い。
『少し違うな。この見た目は借り物だ。元々あいつから生まれたからな』
「ということは……"小風"?」
『そういうこと』
そもそもどうして父さんが夢の中にいるのかという疑問と彼のヒントによって、その答えは導き出された。我ながら察しが良い。つまり、
「──この夢は"晴読"の力だったんだ」
『そうだな。この世界全てが"晴読"と言える。それに比べると俺は当てのない草原に迷い込んだちっぽけな存在だよ』
"小風"は自嘲するようにそう言って肩を竦める。だが"小風"がレベル1で"晴読"がレベル5なので、その存在感の差は当然と言えよう。まさに月とすっぽんだ。
「この空が、全部俺の力……」
雄大な空を見上げて、晴登は嘆息する。夢の中とはいえ、とんでもないものを飼っていたなと自分自身が恐ろしい。
「それで、どうして父さん……いや、"小風"は出てきたの?」
『俺はずっとここにいるからその言われ方は少し傷つくが……強いて答えるとすれば、お前が全てを知ったからだな。お前が自分の力を自覚したから、俺の存在を認知できるようになったんだ』
このイレギュラーな事態は、どうやら父さんの話を聞いたことで起こっているらしい。フラグが立ったとはこのことだろう。であれば、それを逃す手はない。
「……ずっと気になってたことがあるんだけど」
『ん、何だ?』
「──俺が、入学式の朝に見た夢って何? あれも意味があるんでしょ?」
彼がこの夢のことを知っているかはわからないが、晴登はこのことをずっと誰かに問いたかった。
随分と昔のように感じるが、確かに覚えている。智乃と鬼ごっこをしていると、なぜか智乃がドンドンと増殖してしまうというものだ。入学式の朝にそんな夢を見る
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