第122話『晴風』
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ど……"代償"って具体的に?」
「"代償"が起こる例として、魔術カードが挙げられる。あれは魔術師が自身の能力を魔法陣としてカードに刻むことで、カードを触媒として魔術を発動できるようになる古典的な魔術だが、そこでレベルの高い魔術師が作ったカードをレベルの低い魔術師が使う時なんかに"代償"が発生する。内容はランダムだが、身体に支障をきたすものが多いと聞く」
"代償"という文字通り、強い力を得るには何かの犠牲が必要ということか。
晴登が昨日用いた治癒の魔術カードでは、疲れた以外には特に違和感がなかったから、レベルは同程度だったと考えられる。
「お前の場合はカードではなく、使う能力とレベルが見合ってないって話だ。こんなこと、能力が混合している例外にしかありえないことだがな」
「じゃあもしかして……」
「あぁ。今まで使っていた"晴読"にも、何かしらの"代償"が発生してる可能性が高い。心当たりはあるか?」
「うーん、別に何とも──」
そこまで言いかけて、ある可能性が晴登の頭の中をよぎる。
身体は疲れているが、結月のように熱が出ている訳でもなく、別に異常はない。が、強いて挙げるならば、"今朝からやけに視界がぼやけている"のだ。もし、もしこれが"代償"だとしたら。
そう、例えば──視力。"晴読"は目を使う能力だから、目に負担がかかるのは納得がいく。
「何か心当たりがあるみたいだな」
「う、うん。でもこれが本当に"代償"なのかはわからない……」
「そうか、まぁそうかもしれないって自覚があるならいい。これからは少しならともかく、過度な"晴読"の使用は控えるべきだ。わかったか?」
「うん……」
予知という強力な力を使うためには、視力を犠牲にしなければいけない。絶妙な均衡を保つこの天秤の存在が、晴登に"晴読"の使用を躊躇わせる。
本来の自分の能力であるはずなのに、自由に使えないなんて。とても歯がゆい気分だ。
しかし、父さんの"小風"がなければ良かった、とは思えなかった。この力が晴登の魔術師としてのルーツなのだから。
「なに、落ち込むことはないさ。使いすぎなければいいだけのことだ。少しずつ少しずつ練度を上げて、身体を慣らしていく。父さんはそうやって魔術を鍛えたぞ」
父さんは晴登の心情を察して、そう慰めてくれた。他でもない、父さんの言葉なら凄く安心できる。
うん、まだ諦めちゃいけない。いつか絶対に自分のものにしてやる。
「さて、話はおしまいだ。元々お前に訊かれるまで黙っておくつもりだったが、良い機会だからつい喋りすぎてしまった」
たはは、と父さんは頭を?く。
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