第122話『晴風』
[4/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ない。なら否定するのはあまり良くないか。
「それにしても、父さんが魔術師って知ってた?」
少し話を変えて、晴登は結月のその質問を投げる。これについてはどうしても彼女と情報を共有したかった。
10年以上父さんと暮らしてきたが、魔術師らしい素振りなど一度も見ていない。結月から見たら、何かおかしな様子でもあっただろうか。
「うん、知ってたよ」
「そうだよな。俺も知らなくてびっくり……え?」
「え?」
予期していない返事を貰い、一拍遅れて困惑の声を洩らす。
「い、いつから……?」
「初めて挨拶した時かな?」
「つまり最初からってこと……?!」
初めて挨拶した時と言うと、「お父様」の始まりと同様、晴登が家族に結月がホームステイだという苦しい言い訳をしながら紹介した時だろうか。あの時既に、結月は父さんの正体に気づいていたらしい。もしかすると、父さんも結月の正体に……。
「な、何で教えてくれなかったの?」
「だって知ってると思ってたから」
「う、そうなるよな……」
結月からすれば、自分も気づいているのだから、身内である晴登が知らないはずがないと考えるのも当然だ。一度も話題に出したことがなかったので、彼女が教えてくれる訳もない。責めるのは筋違いだ。
「それじゃあ、俺は父さんと話してくるから、結月はゆっくり休むんだよ」
「はーい」
結月の返事を聞いてから、晴登は部屋のドアを閉じたのだった。
*
「母さんと智乃は今出かけている。話をするにはちょうどいいだろう」
ダイニングで向かい合うように2人が座ってから、初めに父さんがそう言った。
つまり、これからする話は関係者以外には聞かれたくないということである。
「昨日智乃からお前の帰りが日を跨ぐと聞いた時は、遠征先ではしゃいでるのかと楽観していたが、まさか魔導祭がそんなことになっているとは知らなかったよ。お前たちが本当に無事で良かった」
「う、うん」
父さんは心底安心したように息をついていた。そこまで心配されていたと知っていたら、晴登だって無茶な行動はしなかっただろう。結果的には必要なことだったのだが。
「さて、影丸からもう俺のことは聞いているようだから、隠しはしない。俺は元魔術師だ」
「"元"?」
「引退したんだよ。とはいえ、今も魔術は使えるけどな」
「わっ」
そう言って父さんが指を動かすと、風が晴登の顔に吹いた。とても繊細で、晴登の風とは明らかに質が違う。そんな風が顔をくすぐるもんだから、思わず声を出してしまった。
「俺の能力は"小風"。レベル1の風属性の魔術だ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ