第122話『晴風』
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なんて、幸先が悪いにも程がある。
とはいえ、最近は思い出すこともしていなかったが……。
『あぁ、あれか』
「知ってるの!?」
『いや、俺は"晴読"本体じゃないから具体的にはわからないが……ただ一つだけ言えることは、智乃の身に何かが起こるかもしれないということだな』
「やっぱり……。鬼ごっこっていうのも関係ある?」
『そこまではわからない。だが彼女のイメージが強かったというなら、より一層警戒すべきだろう』
今までの経験を元に結論づけると、この夢は天気で予知を行なうという、かなり大雑把な予知方法だ。しかし、あの夢だけは智乃の主張が激しかった。それなのに何も起こらないのはどう考えても不自然である。あれから月日が経ったが、時間差という可能性も捨て切れない。
物騒な事件に遭遇したばかりだし、"小風"の言う通り、智乃の身にも気を配っておこう。
『お兄ちゃんなんだから、妹をちゃんと守るんだぞ』
「……うん、わかってる」
"小風"は自分の姿の元である父さんが言いそうなことをそのまま言った。年齢が違いすぎて、父さんとは思えないんだけど。
『それじゃあ、俺はもうここを去ることにするよ』
「え、それって……」
『何、いなくなる訳じゃないさ。ただ、あの時力を貸して疲れたから休むだけだ』
「あの時って……」
思い当たる節があった。
あれは魔導祭本戦で風香と戦った時だ。魔力が切れかけてもうダメだと思っていると、不意に力が湧いてきたのである。同時に頭に声が響いてきたが、あれは"小風"の仕業だったのか。
『その力はお前のものだ。もう俺がいなくても大丈夫だろう』
「……助けてくれてありがとう」
『気にするな』
最後に感謝の言葉を述べると、"小風"は振り返る。もうお別れなんだと、背中で語っていた。その背中の大きさは、今の父さんによく似ている気がする。
『──君の旅路が晴れやかでありますように』
そう言って、彼は空を見上げる。そこには地平線を結ぶように大きな虹が1本架かっていた。
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