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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第75話 演習 その1
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とるべき進路と行動のタイミング。あとは今回重点的に鍛えた艦隊運用術を生かしてもらうしかない。

 あとは仮想敵の進撃速度と行動予測。基幹部隊との連絡線の確保。戦況変化における戦闘序列の確認。後方部隊の退避・再合流ルート。すべてにおける戦闘評価。それらをすべて入力の上、爺様と参謀長の前でシミュレーションを使って説明する。

「大胆な構想だ。確かに前例はあるが、果たして味方が付いてこれるかどうかは……」
 モンシャルマン参謀長は何度かシミュレーションの時系列を戻しながら動きを確認しつつ、そう応える。
「なぁに、失敗しても構わん。このままじりじりと尻に火を付けられているよりはマシじゃて」
そういうと爺様はファイフェルを呼んで、各旗艦へ作戦案のデータ送信を指示する。これは実戦ではないが、戦闘訓練とは全ての後始末も含めてのことになる。モンティージャ中佐もカステル中佐も、実戦ではどうなるかを想定した上で、それぞれの指示を部下に出していく。

 一〇分後。戦艦エル・トレメンドのサブスクリーンに映る戦況投影シミュレーションには、第四四高速機動集団が予定通りの行動をとっているのがはっきりと映っていた。赤で示される味方は三つに分裂し、両翼の部隊はそれぞれ左右に大きく進路を変更している。追撃してくる青の仮想敵は陣形を変えずに一定速度で、直進する部隊を追撃している。当然その直進している部隊と言うのは、俺達がいる集団司令部直卒部隊である。

「戦艦ラトゥーン、撃沈判定出ました。戦列から離脱いたします」
「巡航艦レイトン一二号も撃沈判定です」

 次々と上がる報告はどれも味方の損害ばかり。直卒部隊七二四隻は、その三.五倍の戦力に全速力で追撃されている。
 仮想敵の指揮官は、分裂した第四四高速機動集団を各個撃破する為、まずは進路上に残っている直卒部隊を殲滅すべく、戦列が乱れるのも覚悟の上で最大戦速で接近し、火力を叩きつけてくる。それに対し、爺様は各艦の間隔を広げて砲火の集中を避けつつ、仮想機雷を散布して追撃の足を鈍らせようとしている。今のところ被害の相対は一対四で、こちらが圧倒的に不利ではあるが……

「第二部隊、ポイントXに到着。反転攻撃開始との連絡あり」
「第三部隊より通信。ポイントYに到着、これより仮想敵右側面に攻撃を開始するとのこと」

 左右に分かれた両部隊は第一戦速で仮想敵の側面射程を避けつつ逆進し、その両後背に出る寸前で急速反転を行った。仮想敵の指揮官としては残念なことに、部隊の戦列は乱れておりその両側面の防御は薄くなっている。その薄くなった側面に対し、第二・第三部隊は容赦なく砲火を浴びせる。一五〇年前のダゴン星域会戦の再現、というわけではない。三方からの包囲陣ではなく、二方からの追撃という形だが、両部隊とも思う存分火力を叩きつけ、仮
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