第75話 演習 その1
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告します」
艦橋に掲げられている時計は一五五五時。オペレーターの返答から『仮想敵』は一六〇〇時ピッタリに第四四高速機動集団の左側背最後尾に砲火を届かせる位置に到着できる。これはあまりにも大きなハンデだ。『誰』が指揮しているのか今のところ分からないが、あまりにも可愛げがなく、隙がない。
「教練対艦戦闘用意!」
爺様はバンッと机を叩くと立ち上がって叫ぶ。マイクなしでも階下のオペレーター席に届きそうな声だが、モンシャルマン参謀長かファイフェルがいいタイミングでスイッチを入れたらしく、逆に戦闘艦橋側から爺様の声が響いてくる。
「麾下全艦、第二戦速。前進方位〇二一五時。隊列は戦隊単位。速度調合時より形成。急げよ」
「第四四高速機動集団全艦、第二戦速。前進方位〇二一五時。速度達し次第、戦隊単位にて戦列を再形成せよ。至急」
ファイフェルの復唱がオペレーターに繋がり、司令部オペレーターが麾下部隊旗艦へ、部隊旗艦から戦隊旗艦そして各艦へと伝達される。この戦艦エル・トレメンドも微振動した後、急速に速度を上げ前進を開始。その間も『仮想敵』は速度を維持しつつ、集団の後方へと接近してくる。
「全艦、速度を第一戦速に変更せよ。訓練戦闘の兵装再チェックを急げ」
指令と共に、殆どバラバラに逃げ出した体の第四四高速機動集団は、さらに前後へバラけて行く。加速力のある巡航艦や駆逐艦が自然と前に、戦艦や宇宙母艦それに支援艦が後ろにと艦の配置は一時的に不均衡となるが、後方の仮想敵との距離は時間を追うごとに大きくなる。
そして艦の乗組員たちも攻撃モードと識別信号と指差確認している。査閲官が訓練実施を明言した以上、間違って実弾を発砲して撃沈などしてはえらいことだ。攻撃指揮官である副長の怒鳴り声が、司令艦橋にまで届いている。
「モンティージャ、どのくらいじゃ」
「六分三〇秒です。気が付かなければ」
「後ろにいる男はそんなに甘い男ではない。すぐに気が付くじゃろう」
言われるまでもなく、こちら側の増速に気が付いた後方の仮想敵も、合わせるように速度を上げてくる。それに合わせて艦隊シミュレーションの赤と青の四方形の隙間も少しずつ縮まっている。後方へ向けて砲撃可能な砲門を有しているのは駆逐艦と宇宙母艦だけで、他の艦は艦尾方向に砲撃の死角がある以上、このままでは追いかけっこになるだけだ。それは仮想敵側も望むところではないだろう。俺が席を立つと、直ぐに爺様が手招きしてくる。
「C八回路にはどういう指示を入れておった?」
「後背からの奇襲を想定した逃走指示です。戦闘指示は特に入力しておりません」
俺の答えに、納得たように爺様が深く頷いた。
「なるほど、じゃから各艦が思ったより落ち着いて行動しておるわけじゃな。儂が考えていたより、戦
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