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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第75話 演習 その1
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謀であることを、皆さん頭に入れておいてください」

 前置きなくそう言って締めると、年配の指揮官を中心に苦笑が漏れる。メールロー中佐の眉がピクリと動いたのは間違いない。その後ろにいる査閲官達の顔に緊張が走るが、それも一瞬で終わり、演習事前会議は終了する。指揮官達が席を立ち爺様や参謀長達と雑談を交わす中、メールロー中佐に耳打ちされた一人の少佐が、明らかに俺を標的として近づいてきた。深い皺と思慮深そうな瞳。叩き上げか専科学校出身のベテランであろう初老の少佐は、俺より先に敬礼すると手を差し出してきた。

「ヴィクトール=ボロディン少佐ですね。メールロー査閲チームで次席を務めます、ケイシー=マロンと申します」
「ヴィクトール=ボロディンです。マロン少佐、はじめまして。今回はよろしくお願いします」
「あぁ実を言いますと、はじめましてではないんですよ。ボロディン少佐とは四年前にお会いしているんです。マクニール少佐がお辞めになられる時に、ちょうど査閲部に転属になりまして」
「あ、そうでしたか。これはとんだ失礼を……」
「ボロディン少佐は統計課でしたから覚えていらっしゃらないのも無理ないですよ。小官は航路保全課の大尉でしたから」

 ははっと笑いながらマロン少佐は短く切り揃えた髪を掻く。正直その屈託のない顔に見覚えはない。何しろ上がってくる報告書の集計が主任務の統計課と、訓練査閲以外でも常に船に乗って航路状況を把握する航路保全課では同じ査閲部でもほとんどすれ違いといっていい。マクニール少佐のご子息は航路保安局の警備艇乗務員だから、その縁での顔見知りということだろう。

「で、少佐?」
「まぁ、いろいろご苦労はあるとは思いますが、くれぐれも『不眠症』にはなられないようお気を付けください。とメールロー中佐からの伝言です」
 中佐が何を言いたいのか、ピンときた俺は一度他の査閲官達と話しているメールロー中佐を見た後、マロン少佐に頭を下げる。
「ご配慮ありがとうございます。しかし、よろしいのですか?」
「……えぇフィッシャー中佐の愛弟子には釈迦に説法でしょうが、『ハンデ』も過ぎると正当な評価ができませんからね。あからさまでなければ、結構です」
 ちょっと驚いて瞳孔が少し開いたマロン少佐だったが、もっともビュコック司令官は充分ご存知でしょうけれどと、すぐ表情を隠して肩を竦めながら笑って言った。

 あからさま、とあえて釘を刺しに来たということは、例えば『今から第八七〇九哨戒隊を既に提出された訓練から外すようなことはしないで欲しい、そこまで露骨に対応されては、流石に正当な評価どころかカンニングを疑われてしまう。それは査察チームとしても望んでいるわけではないですよ』と言いたいのだろう。

 指揮官や査閲部の面々が大会議室を出て、改めて司令部会議室に
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