第2部
スー
唐突な別れ
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人が一人いなくなっただけで、どうしてこんなに静かなのだろう。
少し前まではユウリと二人旅だったのに、心にぽっかり穴が空いている気分だ。
最後の鍵も手に入れ、意気揚々としていたはずなのに、私の心は頭上にあるどんよりとした曇り空のように鬱々としている。
「いつまで落ち込んでるんだ」
甲板の端でぼんやりと水面を眺めているところに、しかめっ面をしたユウリが声をかけてきた。
「もうすぐテドンに着く。着き次第すぐに出発するから準備しろ」
「……」
ルカと別れてから船に戻った私たちは、オーブを手に入れるため、再びテドンへと向かっていた。
だが、テドンという町はすでに魔王軍によって滅ぼされており、日中訪れても障気にまみれた廃墟しかなく、生きている人間が足を踏み入れるには相当の覚悟が必要だ。かといって以前と同じように夜に訪れても、話の通じない町の人の幽霊がたくさんいる中でオーブを探さなければならない。幽霊嫌いの私にとって、そこを訪れることは恐怖でしかなく、オーブがなければもう二度と足を踏み入れたくはない場所でもあった。
だけどそれは建前で、本音は別のところにあった。
「お前がそんなんじゃ、ルカに笑われるぞ」
本気で言ってるのか、真顔で言い放つユウリ。ルカの名前が出る度に一緒に冒険をしたときの思い出が蘇り、涙腺が緩む。冗談でも、今はそんな風に私とルカを比較して欲しくなかった。
「弟のいないユウリにはわからないよね」
ぶっきらぼうにそう言ってから、私はハッとなる。ユウリは私を気遣っていってくれてるのに、これではただの八つ当たりだ。私はすぐに後悔し、ユウリを見返す。
「ごめん、ユウリ……」
「なら勝手にしろ」
私の一言に気分を害したのか、短くそう言い残すと、さっさとその場から立ち去ってしまった。
絶対今ので彼を怒らせてしまった。なんて私はバカなんだろう。テドンに到着するまでの間、私はずっと頭を抱えて後悔し続けた。
やがて、船はテドンの近くの入り江に静かに錨を下ろした。
私は急いで仕度を済ませ、ヒックスさんと話をしているユウリのところへと向かう。
「結局行くのか?」
「……うん。さっきはごめん」
「足を引っ張るようならすぐに置いていくからな」
そう言うと、一人ですたすたと行ってしまった。うう、まだ怒ってるのかな。
私が再び落ち込んだ顔をしているのを見てとったのか、ヒックスさんが声をかけてきた。
「ミオさん。ユウリさんはミオさんのことをとても心配されてましたよ」
「え、ユウリが!?」
「さっきも、ミオさんが調子悪そうだから自分一人で行くと私に話してくださったんですよ。だから、あまり無理をしないでください」
ユウリが、私を心配してくれてる……?
ああ、私は本当にバカだ。結局自分のことしか考えてない
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